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嘘の私と始まりの私 ページ29

静かな部屋にキーボードの音が響く。


優琴「…本当に、良かったんだよな。」


ドアにもたれながら声をかけられた。


『はい。元々私には合ってなかったんですよ。嘘をつきながら生活するのは。…兄さんが一番よく知っているでしょう?』


優琴「今度こそ、嘘が真になって…明るく、生活できると思っていたんだけどな、兄ちゃんは。」


手に力を入れ、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


『ごめんなさい。でもこんな環境を作ってくれて、笑わせてくれたのは兄さんですから。…だから私は"雨弓そると"を卒業します。そるーむには悲しんでほしくないので明日にはTwitterで教えましょう。』


優琴「そのお知らせが、一番悲しませてるんだけどな…。けど可愛い妹のためだ。マネージャーとして、その事を社長に伝えてくるよ。"あの事"も、お願いしておくよ。」


まるで話を聞いていたかのようにタイミングよくチャイムが鳴った。


もう就寝する時間なため来客というわけではない。親もこれないだろう。


優琴「俺が見に行ってるからシャットダウンしとけ。」


返事を聞く前にドアへ一直線に走った。
…大方、検討はついている。


近くに住んでいて、直接話したいと言う人物を。


剣持「っそる!!」


私はよく知らなくて、でも彼は知っているという嘘をつく。歪な恋の持ち主だと。


『…お久しぶりです。剣持さん。』


だから私は貴方を突き放したい。


『今来たということは配信を見ていたのでしょう。同業者ですから特別に教えますが、私はもう辞めます。また琴音として…いえ、雨弓Aとして。』


あの頃から変わらず嘘をつき壁を作っていた私なんか忘れて、執着しないで新しい人生を。


剣持「…敬語、どういうことですか。それにAって……。」


『答えは簡単。剣持刀也が見てきた私は紛い物、嘘ということです。』


皆と違う環境で生まれ、本当の友達がほしくて明るく振る舞い…でも出来たのは銀だけ。引きこもってからそれは止めた。でもまた戻った。


『___貴方が、また私に嘘をつかせたんですよ。』


だから嫌いになって、未練なんか残さずに。

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作品ジャンル:恋愛
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安海 - kuruさん» kuruさんコメントありがとうございます!こちらも最後まで楽しんで呼んでもらえるように駆け抜けていきますね! (2022年11月8日 18時) (レス) id: a1ab37ebe0 (このIDを非表示/違反報告)
kuru - 初コメしつれいします!とても面白かったです!作者様が終わりを#4か5と仰っていてもう少しで悲しいですが最後まで楽しく読んでいきます! (2022年11月8日 16時) (レス) id: a853518736 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:安海 | 作成日時:2022年10月24日 19時

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