星空の下で夜を謳う ページ14
瞬く間に魔法の絨毯は、僕らを乗せて
雲の上まで上昇していった。
月が、こんなに近くで輝いている。
グリム「本当に空を飛んでる〜！
おい見ろA、寮がもうあんなに小さいんだゾ！」
『……そう、だね。』
グリム「A…？大丈夫か？」
絨毯を掴む手が震える。星空を見れない。
別に、高いところが怖いというわけではないんだ。
高いところから、落ちるのが怖い。
死への恐怖ではなく、落ちるということ自体への恐怖。
あの日から、一切拭えなかった負の記憶。
カリム「…高いところ、苦手なのか？」
『…いえ…高いところというか…その…
落ちた、ことがあるんです。』
カリム「……」
『流石にここまでの高さからではない…けど。
子供の頃に、一回だけ。
足を踏み外して、転落して…その時に…その、時のせいで…ッ…』
カリム「A。」
震える手を、カリム先輩の両手が包む。
涼しい風が吹く月の下で、カリム先輩の手はとても暖かかった。
思わず顔をあげると
カリム先輩の月明りに照らされたガーネットの瞳に
思わず吸い込まれそうになった。
やばい。何を言ってるんだ僕は。
あんな日の話は、するべきじゃない。
ごまかさないと、隠さないと。
決して誰にも、干渉されないように。
『…ッ…あの、いや…冗談です冗談！
いやぁ…実は高所恐怖症で…』
カリム「……」
『高いところに来ると、わけがわからないことを口走っちゃうんですよ〜
ホント、ごめんなさ…』
カリム「ごまかさなくていい。大丈夫だ。」
『……』
細められたカリム先輩の瞳は、酷く優しそうで
これ以上眺めていると、止めどなく本心を明かしてしまいそうで
今すぐ目を逸らしたかったのに
でも、それをさせてもらえないほど
カリム先輩の眼は、真剣だった。
カリム「ごめんな。俺、お前に楽しんでほしかったのに
お前の苦手なこと、全然考えてなかった。」
『いや…本当、大丈夫で…』
カリム「大丈夫じゃないから、そういう冗談を言ったんだろ？
ここなら、俺とグリムと…あと魔法の絨毯しかいない。
月も星々も、見ないふりをしてくれる。
無理に隠そうとしなくていい。俺は、お前の弱いとこも知って
そのうえで友達になりたい、
俺は、絶対にお前の手を離したりしない。
だからお前は落ちない。絶対だ！」
正面から、僕の隣に座りなおすと
情けない僕の顔を見ないようにして、星空を見上げた。
カリム「たくさん弱音を吐いて、それで後は笑うだけにしようぜ！」
決して、僕の手を離すことなく。
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ゆる(プロフ) - 続いてほしいです………！更新楽しみにしてます！ (2022年9月24日 18時) (
レス) @page47 id: 3e63e5a771 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり - 天才か？？？好きです。 (2022年4月4日 21時) (レス) @page47 id: bfccae0caf (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 更新たのしみにしてますっ！ (2021年9月10日 16時) (レス) id: 2f778f3504 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 惚れた、、、フロイドくんやっぱりすき、、、更新楽しみにしてます……！ (2021年8月26日 0時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天空の巫女 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/
作成日時：2021年8月1日 22時
