義勇さん好き集まれ！義勇さん短編集〜 第１弾

「月が綺麗ですね。」と言われたら… ページ43

時計を見て、私は羽織を着て立ち上がった。

大丈夫、まだ迷惑な時間じゃない。

―in外―

私の屋敷から冨岡さんの屋敷までは、

他の柱の人たちより一番近い。

歩いてしばらくすれば着くだろう。

だんだんと冬らしくなっていく季節の風が、

私の頬をひんやりとかすめた。

とはいえ外は寒くて、羽織がなかったら…

と考えると寒さがさらに増した気がした。

「コンコン」

扉を叩いて少しすると、隊服を着て

いつもの半々柄の羽織を羽織っている

冨岡さんが出てきた。

義勇「如月…。どうした、もう夜だが。」

もしかして迷惑…だったかな。

ハンカチを早く渡して帰りたくなった私は、

右手にあるものをバっと差し出した。

言葉が喉に詰まって、何も言えない。

そんな私の様子に少し驚いている冨岡さん。

(名前)「こ、これ！この前の任務で

　 借りたままになっていたハンカチです…。」

初めは大きかった声がだんだんと小さくなってしまい、

最後には何も言えなくなってしまった。

早く、帰らなきゃ…。

(名前)「今日はもう遅いので帰りますね。」

そう言って歩き出した私の足取りはとても重く、

つい立ち止まってしまいそうになった。

でも私はそれ以上前へは進めなかった。

何故なら、帰ろうとする私の腕を

冨岡さんがギュっと強くつかんだからだ。

義勇「…茶でも、飲んでいかないか？

　 お前が帰りたいのなら、今日はやめておくが…。」

いつもと表情は変わらないが、どこか焦った声色をしていた。

てっきり迷惑だと思われてるのかと思ってたけど、

その言葉が嬉しかった。

(名前)「はい、ぜひ！」

冨岡さんが出してくれた茶菓子とお茶は美味しくて、

寒さでどことなく冷えていた体によくしみわたった。

義勇「…美味いか。」

自分もお茶を飲んだりした後に私に問うた。

(名前)「美味しいです…！どこのですか、これ？」

意外にも甘味に詳しい冨岡さんと、

お気に入りのお店について話したりした。

もしかしたら初めてかもしれない、

冨岡さんと2人でこんなに話したのは。

義勇「お前が嫌でなければだが、

　 今度一緒にその甘味処に行ってみないか？」

胸が大きく脈打った。

嬉しい、今度がいつになるかは分からないけど…。

(名前)「はい、ぜひ！」

嬉しさでつい声が震えてしまった。

それでも冨岡さんは少し微笑んで「そうか」と言った。

…笑った？

初めて見る冨岡さんの笑顔が私は好きで、私も笑みを浮かべた。

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