098 side N ページ48
その顔が見られただけで
俺は、充分だよ、A。
「ついに俺も身を固めちゃいます！」
「そ、そう…」
歯切れの悪い返答。
「てな訳で、ごめんなーA。
お前の相手、もうしてやれないわ！」
「…別に、謝る…事じゃないじゃない」
着地点を見つけられない視線。
「ははっ、そう？」
「…そう、よ」
あからさまとも言わんばかりの動揺は
想像していた範囲を遥かに越えていた。
そしてその動揺は
Aの中にある“片岡直人”という存在が
思っていた以上に大きかったんだと証明していて
自尊心が満たされる。
だけど、
「…A」
その身体を
無意識に抱き寄せそうになってしまった俺は
…まだまだ、だな。
あの日から6年。
俺の恋が終わったその日
奇しくもあの日のような雨が降っていた。
後方から差し込んだヘッドライトの灯りに
自分の影が
濡れたアスファルトの上に伸びた。
程なくして真横を通り過ぎたタクシーは
雨水を後輪で跳ねあげながら
今度は
十数メートル先に佇む見覚えのある男を
俺に知らしめるかの様に照らしている。
スピードが緩み
ハザードランプを点けながら停車したタクシー。
そこから誰が降りて来るかを当てろなんて
クイズにもならない。
A。
当然の様にタクシーを降りた想い人。
ただ、その後ろからもう一人。
これまた見覚えのある男が降りて来るとは
思いもしなかった。
Aより
過去の男から、新たな男へ。
Aが新たな男に抱き寄せられた瞬間
「……ははっ」
乾いた笑いが込み上げた。
同時に涙が零れていたとしても
きっとそれは、雨に紛れて具現化しない。
6年前
ずぶ濡れで泣いていたAを思い出しながら
来た道を引き返した。
“直人、あなたもそろそろ…”
“片岡君、そろそろ返事を貰えないか？”
きっと丁度いいタイミングだったんだ。
“母さん、その見合い、受けるよ”
“来月には
これが、俺の運命だったんだ。
「見送り、ちゃんと来いよ？」
「ちゃんとって何よ」
「飛行機だけ見送るのは、ナシな？」
「…やめてよ、そんな昔の話……」
Aと俺が歩んで来た道が
今ここで
分かれ道になった。
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空(プロフ) - kotanonさん» 更新遅くなってすみません^^;ありがとうございます！３も、お付き合い頂ければ嬉しいです＾＾♪ (2020年6月24日 7時) (
レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
kotanon(プロフ) - 空さ〜ん☆更新ありがとうございます！！ これからの展開も楽しみにしてます♪♪ (2020年6月24日 0時) (レス) id: 3c70e90779 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ねーやんさん» お久しぶりです！お手間とらせてすみません^^;移行になります！よかったらまたよろしくお願いします＾＾ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 行きましたよ―笑ついでにATMもｗｗ (2020年6月23日 10時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わ…びっくりしました(笑)お久しぶりです。久々すぎても一度読み返しまーす(笑) (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f158f058f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空
| 作成日時：2020年3月8日 16時
