043 side H ページ43
「潰れたねー、A」
「すみません、飲ませすぎました」
一次会も終盤。
Aと話せたのはバルコニーの一瞬だけ。
美鈴と岩田に聞き耳を立てながら
2次会に意気込むお姉様達をあしらう。
「岩田、A頼んでいい？」
「はい、解りました」
まんざらでもない岩田。
「俺が送ろうか？」
思わず割って入ったが
「登坂は主役だし、2次会あるし？」
“やっぱ岩田、お願いね”
まあ…そうなるんだろうけどさ。
Aを抱えタクシーに乗り込む岩田をただ眺め、
あの日と立場が逆になった自分に苦笑いした。
2次会を適当にやり過ごし、
マンションに着いて見上げた3階。
灯りが消えたままのその部屋に胸騒ぎがした。
電話を掛けて数十秒。
呼び出し音が無情に響いただけだった。
3階に寄りインターホンを鳴らしてみたものの
当然返事がある筈もなく
18階に向かいながらLINEを送った。
「…どこ居んだよ」
結局その夜、Aから連絡は無かった。
翌朝。
確認した通知には着信も返信もなく
既読にすらなっていなかった。
バルコニーで通りを眺めながら煙草を吸った。
けれど、時が流れるだけで
いつまでたってもそこにAの姿は現れず
もう一度携帯を覗く。
変化のないその画面を無駄に眺め、
ため息まじりの緊褌一番、その名前をタップした。
“岩田剛典”
俺、相当ダサいと思う。
Aと岩田が接待だったあの夜、
ナイト気取りで岩田から奪う様にAを連れ去ったと言うのに
今度は必死にその行方を探し
一緒に居る可能性を解っていながら
それでも心配で電話を掛ける自分。
後輩の、しかも恋敵の岩田に“焦り”を晒し
プライドも面目もあったもんじゃない。
それでも繋がらなかった岩田の電話に
二人が一緒に居ると確信した。
無事であればそれでいい。
そんな建前を自分に言い聞かせながら
週明けに使う資料に目を通した。
俺は岩田の事情を知っている。
“臣さんと同じ会社に就職したいんです”
その判断に肯定も否定もしなかった。
きっと正解などない。
岩田の気持ちに気付き、それでもAに付き進まないのは、定めが枷になっている事も察していた。
だから、岩田がAを連れ帰ったとしても
可能性はゼロではないにしろ
事が起こる事はない、と、どこかで思っていた。
“無事であればそれでいい”
その建前の奥には、わずかな底意が共存していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1677人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「登坂広臣」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
空(プロフ) - ユキさん» ありがとうございます＾＾ライブは、このお話の030での登坂さん風に“ご想像で”です(#^.^#) (2020年1月27日 16時) (
レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 空さんのストーリー大好きです三代目perfectyearライブは観に行く予定はありますか？私は京セラ観に行きたいけど倍率凄く高いですね(´；ω；｀) (2020年1月27日 12時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - ユキさん» 楽しんで頂ければ幸いです＾＾ (2020年1月26日 19時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三代目メンバーのストーリー大好きです(*ゝω･*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 7bd6b3fcc4 (このIDを非表示/違反報告)
空(プロフ) - shireyさん» ありがとうございます(^^♪ (2020年1月26日 13時) (レス) id: 7cc216fb7f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：空
| 作成日時：2020年1月18日 10時
