Maybe.Ⅲ (ページ34)

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＊ページ34

　
「……ただいま」

　モヤモヤした気持ちを抱えたまま、俺は家に帰って来た。誰もいない一人暮らしのアパートに俺の声だけが跳ね返ってくる。

『カッコいいな』

　佐久間先生の言葉が頭から離れない。もちろん、仕事をしている時は切り替えていたけど……。

「……」

　何だろうな……この気持ち……彼のことを考えると、嬉しくもなるし……悲しくもなる……感情の起伏が激しくて、自分がついて行けなくなる。

「……はぁ……」

　知らず知らずのうちに、ため息が出てしまう。

(もう、本当に何なんだよ……)

　気分転換も兼ねて、テレビを付ける。普段はほとんど見ないけど、なんとなく付けてみた。

『ねえ、それって恋なんじゃない？』

　テレビを付けた瞬間に、ドラマに出ている女子高校生が同級生に台詞を言う。

「……恋……？」

　いやいやいや、どうして佐久間先生の顔が浮かぶの？彼は男で、俺も同じ性別で……。

「……性別なんか……関係ないか……」

　どんな恋の形があってもいいと思う。差別とかじゃなくて、自由であるのが本来の姿なのだから……。

「……」

　認めるしかない。俺は……佐久間先生が、好きなんだって。
　あの時から、辛くて辛くて本当に仕方がなかったあの時に……救われた時から……。

　
　