Maybe.Ⅲ (ページ32)

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　佐久間先生が話している内容を聞いて、不自然じゃない台詞を考える。

「……俺たちの出る幕はなさそうですね」

　少しの間で考えた言葉を口に出して、自分で自分の言葉に驚く。
　いや、クサくない？もっとまともな言葉なかったの？

「阿部先生」

　誤魔化すように病室の中を見る。中では、三宅先生が困った様子で、点滴ボトルを高い位置に持ち上げている。

「お疲れ様です」

「お疲れ様。救急病棟でドクターコールとか何事って思ったけど……渡辺先生の患者さんだったんだね」

　佐久間先生に話しかけられたので、病室から彼に視線を向けて会話をする。

「え？」

　すると、佐久間先生の反対側から宮舘先生が珍しく、驚いたような声を出した。
　どうしたんだろう……他の人のことで、そんなに驚くことないのに……。

「先生はさっき、ご家族へICをしに行かれましたよ」

「そうなんだ」

　佐久間先生が丁寧に教えてくれたことに対して、ホッとしたような反応をする。
　うーん……普段、少しミステリアスな雰囲気を漂わせている彼がこんな少しのことに反応するのは珍しいな……。

「カッコいいな」

　俺が他事を考えている間に、佐久間先生がポツリと、俺と宮舘先生に聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声で呟いた。
　
　