Maybe.Ⅲ (ページ26)

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『覚えてますよ！ジェシーさんですよね。お母さんはあれから大丈夫ですか？』

　自分のことを覚えていて、尚且つ母親のことも心配してくれた。こんなに優しい人が世の中にいるだろうか？

「……」

　先生のことを思い出すと、少しだけ顔が熱くなる。単純だな、自分も。

「ジェシーさん、この後って患者さんのバイタル行きますか？」

「はい」

「じゃあ、僕も一緒に回りますね」

　佐久間先生と一緒に、患者さんの子どもたちを見て回る。みんな、特に問題もなく順調に経過を辿っている。

「みんな、とてもいいですね。海琉くんって明日退院でしたっけ？」

「はい」

「問題なさそうですね」

「先生、海琉くんの退院依頼かかってなかったので、またかけておいてもらってもいいですか？」

「あ、忘れてました。今、かけますね」

　そう言って、佐久間先生が近くにあったカルテを起動させた時だった。

『ドクターコール、ドクターコール。救急病棟。ドクターコール、ドクターコール、救急病棟』

「え！？」

「救急病棟でドクターコール！？」

　看護師は全員、廊下に出てアナウンスを聞く。だが、誰も持ち場から救急病棟へ行こうとする人はいなかった。救急病棟の看護師が対応できない重症患者だ。自分たちが行っても、役に立つはずがなかった。
　
　