番外編 You side ページ39
.
春の穏やかな日差しが降り注ぐ。
本日は晴天なり。
まだ冷たい春風に吹かれた桜の花びらがはらりと舞って、ゆるいパーマのかかった茶色い髪の毛に落ちる。
「あ、」
「ん？」
私の声に反応して振り向いた翔太くんと、この道を歩くのは今日が最後。
なぜなら、今日で翔太くんは白雪高校を卒業するから。
「頭に、花びら、」
渡辺「ん。とって。」
お辞儀するみたいに頭を下げて、私に取ってと上目遣いでお願いしてくる翔太くんはなんだか子犬みたいでかわいい。
頭に乗った桜の花びらを取ろうと近づいた時にふわっと香った少しだけ甘い香りは、翔太くんのお洒落な香水の香り。
翔太くんが中学生くらいから「モテたい！」と言って付け始めたその香水を選んだのは私。
一緒に買い物に行って、翔太くんが選んだいくつかの中から「Aが好きなやつにする」と言われて選んだんだ。
スッキリとしてるけど少しだけ甘くてやさしい香りが、翔太くんみたいだなって。
今日も付けてくれてるんだ。
.
.
.
渡辺「あ、佐久間たちもう体育館裏に集まってるらしいわ。」
校舎に着くなり携帯を見てそう呟いた翔太くん。
今日くらい、私がお兄ちゃんを独占するんじゃなく、みんなの翔太くんにしなきゃいけないよね。
頭ではそう思うのに、、
「……私、帰りここで待っててもいい？」
渡辺「おう！じゃあ、またあとで！」
私のわがままに気付かない様子で、むしろ、当たり前みたいに私の要望を受け取った翔太くんは体育館へ小走りで向かっていく。
今生の別れじゃないし。
家に帰ったら翔太くんは居るのに。
なぜかとても寂しい……。
.
.
.
翔太くんと別れて、教室に向かう途中に聞こえてくる声。
「ねぇねぇ、渡辺先輩に頼んだらスクバくれるかな？」
「先輩優しいからもらえそう！私上着ほしい！」
「てかさ、告るなら今日しかなくない？」
「私告るのは無理だからせめて第二ボタンもらいたいなー」
「第二ボタンとかそれもう好きですって言ってるようなもんだから！」
「確かに！！あはは！！」
賑やかな廊下でふと聞こえてきたその会話に、モヤモヤした気持ちが大きくなる。
翔太くん、相変わらず人気だなぁ。
翔太くんの第二ボタン、、小中と貰ったのは私だったけど。
きっと今年はもらえないんだろうなぁ……。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 521人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たぬ(プロフ) - 朝桐さん» 最後まで読んで頂けただけでも嬉しいのに、宝石みたいにキラキラした素敵な感想をありがとうございます。頂いた言葉全てが宝物です。こちらこそ出逢ってくださりありがとうございました。 (3月21日 23時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました！涙なしでは見れなくて、とても生きててよかったと、見れてよかったと。運命といいますか奇跡にただ救われました。執筆活動お疲れ様です。今後のたぬ様の日々が愛に溢れますように。本当にありがとうございました！ (3月18日 22時) (レス) @page43 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - みみみさん» お読み頂き、素敵な感想までありがとうございます。楽しんで頂けたのなら本当にすごく嬉しいです！こちらこそ、ありがとうございました！ (9月6日 23時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - 今日初めて見つけたこの作品、１話から今まで全部いっきに読みました☆本当に素敵な作品でした😊ありがとうございました！！ (9月2日 17時) (レス) @page43 id: 10d256d720 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 桜色さん» とっても優しくて愛のある感想を送ってくださってありがとうございます。どの言葉もとても勿体ないくらいですごく嬉しいです。最後まで読んで下さってこんな素敵な感想まで下さって、こちらこそありがとうございます！ (6月5日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たぬ | 作成日時：2022年8月24日 22時
