時々、狼 (ページ33)

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晴天の中続いた体育祭は、緑団との接戦の末私たち黄色団の優勝で幕を閉じた。

片付けのある照くんを教室で蓮くんと待っていると
カタリとドアの音がして、そこに立つ阿部先生

阿「優勝おめでとう～」

目「……げ」

阿「なんだよ、そんな睨むな」

目「いや睨むだろ、何しに来たんだよ」

私を後ろに隠し、かばってくれる蓮くん

スタスタと近づいてきた先生は私たちの前で頭を下げた

阿「……悪かった」

『……は？』

阿「今日、Aちゃんの首に見えちゃったんだよね、あいつのつけたキスマーク」

『あ…』

阿「それ見たらもう無理だーって思って。素直に諦めようかなってさ」

目「…まじかよ」

阿「これはお詫び。岩本にも渡しといて、じゃあね」

先生はスポーツドリンクを３本机に置き、
ひらひらと手を振りながら教室から出ていった。

『……こわかったあ…』

目「俺またなんかしに来たのかと思った」

『私も…』

2人で胸を撫で下ろすと同時に照くんがやってきた

岩「目黒、Aのことサンキュー」

目「あ、おつかれさまっす」

岩「A待たせてごめんなー…ってなにこれ」

『あ、えっと…阿部せん…』

岩「は？」

一瞬で照くんの顔が曇った。

やばい、この人の前で阿部先生の名前は禁句だった。

岩「触られた？なあ、大丈夫？」

『なにもされてない！謝られただけ！』

目「まじっすまじっす、これお詫びだって置いてきました」

照くんはボソッといらねーと呟き、
無理やり蓮くんのバッグの中にそれを押し込んだ

目「3本もいらないんすけど」

岩「俺は1本もいらねーし、Aにもやらねー、ほら帰んぞ」

グイグイ腕を引っ張られて駐輪場に着き、
適当に蓮くんに挨拶すると私を荷台に乗っけて走り出した

『今日すごい飛ばすじゃん』

岩「はやく帰りてえの」

『……あ、もしかしてお腹すいたの？』

岩「ちげぇよ！……はやくAのこと独り占めしたいだけ」

風に吹かれる照くんの頬はほんのり赤く染まっていた。