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それからも海を相手にはしゃぐ私の写真を何枚もカメラに収めた彼は満足そうな表情をしていた。
私が彼の写真を撮ろうとしても俺は撮る専やから。とか言うから撮らせてくれなくて。
でも、たまにはこういうのも悪くないか。
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ｻｧｰｻｧｰ、潮の香りと一緒に波が近付く気配がする。
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向 「なぁ…」
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あ 「…」
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向 「Aちゃん。」
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康二くんが私を名前で呼ぶのはこれで2度目だ。
突然私の名前を呼んだ彼の声はすごく男らしく感じて＿＿＿＿＿
男の人から名前で呼ばれるのは慣れてないからすごく変な感じがする。
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向 「朝食の時間やしそろそろ戻ろか！いい写真もたくさん撮れたしな。」
あ 「うん。」
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今この瞬間、少しだけ気恥ずかしい思いをしているのはきっと私だけなのだろう。
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…、…
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向 「この写真めっちゃ良くない？」
あ 「えー、それ事故画だよ！顔引き攣っちゃってるし。」
向 「あ、これもええわ。」
あ 「ちょっと！それただの変顔！」
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こうして一緒に居ると康二くんって少し悪戯っぽいところもあるんだな、なんて新たな発見が。
だって多分今、私の反応を薄ら見て悪い表情をしているから。
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向 「…、もう慣れた？」
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あ 「…？」
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向 「今の部署。最初はすっごい大変そうやったけど最近はなんだか生き生きしてる感じするから。」
あ 「そうだね。最初は嫌で嫌で帰りたくて仕方がなかったけど康二くんや梨花さん。周りの人は良い人だし、」
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向 「なら良かったわ。まぁ、異動したばっかの時からメガネちゃんは他の子とは違うというか、なんていうか…」
あ 「そうだよね。異動して来たばっかりなのに副編集長にも突っかかったりね。」
向 「うん。初対面から凄かったもんな。あの時見てたからさ、ロビーで副編集長に水かけてたの。」
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私が羽野さんに呼ばれたときか。ロビーで彼を待ってたら女の人と居る渡辺副編集長の服に水をかけてしまって。
初対面なのに怒号を浴びせられて、それで…
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あ 「懐かしい。でもさ、副編集長も見かけはあんなだけど多分本当は、」
向 「本当は？」
あ 「いや、何でもない。」
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本当は、の続きを言いかけようとして、やめた。
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それは副編集長への今までの鬱憤があるから。
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2024年1月21日 16時
