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せっかくの社員旅行だからまだ部屋で寝ているのは勿体無い気がして、飲み明けで少し重い身体を起こし私達は今潮風の漂う近くを散歩している。
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朝8時の海辺にはまだ誰も居なく私達の貸切状態である。
大きく伸びをした康二くんは爽やかに微笑むと私を見つめた。
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向 「気持ちええなー…この辺りは。」
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あ 「そうだね。なんていうか目覚める〜。」
向 「おん。なんか食べるもの買っといたらよかったわ！ほら、あそこでパンとか食べながら海眺めたらめっちゃ気持ち良さそうな気するしさ。」
あ 「確かに！すっかりお腹も空いてきたしね、」
向 「昨日あんな飲んだのにな。」
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昨日の夜のことはすっかり覚えてないと言えば康二くんは嘘やろ。なんてまた笑う。
ビューッと吹いた風が並木に当たりまたいい香りを漂わせた。
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こんな解放感のある場所を二人占め出来ているなんて、
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まるで学生の頃に戻ったみたいに心が躍る。
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あ 「康二くん、やっほ〜！って、冷た…」
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だから私は、浜辺の方まで一人走ると静かな海に触れた。運悪く波の大きいそれが来て服の裾にかかってしまって、
それを見て向こう側にいる彼は面白そうにしている。
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向 「ふは、メガネちゃん。大丈夫か？風邪だけは引かんといてな。」
あ 「だいじょーぶ！康二くんもこっち来て〜！」
向 「…、待って。そのまま。」
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その瞬間、どこからか、パシャリと音がした。果たして彼はどこにそんなものを忍ばせていたのだろうか。
ジャケットの中からとあるものを取り出すとそれを私に向けていた。
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あ 「カメラ？！」
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向 「ええ素材撮れたわ。でももっと自然なの欲しいな。」
あ 「え？」
向 「あー…常に持ち歩いてんねん。何でも思い出になるから。」
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頭にハテナマークを浮かべた私に欲しい答えをくれた彼はまた一つシャッターを切った。
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あ 「すっぴんなんだけど！恥ずかしい。」
向 「そんなん気にせんといて。あー、今の表情めっちゃええわ。」
あ 「気にするよー。もう。」
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でも、なんか楽しくなって来ちゃったな。カメラの向こうで嬉しそうにしてくれる彼を見ると自然と気分も乗って来ちゃうというか、
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2024年1月21日 16時
