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何やってんの。それはこっちの台詞で…、
こんな人目のつかない場所で。
薄手のコート一つだけを身に包み、岩の近くに佇んで一体何をしてらっしゃたのだと言うのだろう。
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沈黙の中、まるで反応を探るみたいに。
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あ 「…私は、探しに、」
渡 「探す?」
あ 「…や、少し散歩してたら迷子になっちゃって、?」
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横目で見て副編集長を見ても反応はなくって。
こんな状況下でも表情何一つ変わらない彼はやはり冷静沈着なんだと思う。
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あ 「副編集長の方こそ、どうしたんですか、?こんなところで…、」
渡 「羽野を、探してたんだ。」
あ 「そうしたら?」
渡 「……、迷ったんだよ。」
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迷ったその言葉だけが分かりやすく発音が濁っていて思わず笑ってしまいそうになった。
普段の副編集長には考えられないくらい正直だから笑いを堪えるけどそれでも笑みが溢れてしまいそうだ。
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渡 「お前…、後で覚えとけよ。」
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やばい、バレた、
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って、そんなことよりも、
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あ 「危ないので早く戻りましょう!」
渡 「…あ、あぁ。」
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言葉を発する度に白い息が出る。
このままこの場所に居たら寒さでどうにかなってしまいそうだ。
どのくらいの時間なのだろう。
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私よりもきっとここに居る彼はもっと…、
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とにかく早くみんなの元に戻らないと、
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渡 「出口分かるんだよな。」
あ 「はい。確かここを右に…、いや、やっぱり左でした!」
渡 「は?」
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いけない。この顔は役立たず。絶対そう思われてる。
そんなこと言われても、
私は副編集長を探しに行かなきゃただそれだけで。
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しかし、ムスッとした顔の当の本人には私のこの気持ちは勿論伝わっていない。
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あ 「…、すいません。」
渡 「もういい。行くぞ。」
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立ち上がった副編集長はそう私の先を行くけど、
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あ 「どうか、しました?」
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渡 「何でもない…、」
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あ 「…、」
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副編集長、もしかして足、怪我してるの_______
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作者名:くろーばー。 | 作成日時:2024年1月21日 16時