＊62 Shota.W side ページ2
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俺が副編集長を努める雑誌《Moon》。
今やこの業界じゃ売上トップレベルを誇る主に20代後半から30代前半をターゲットにしたビューティー系雑誌だ。
そんな、《Moon》の編集部の中で、唯一俺に突っかかって来るある意味強靭な精神の持ち主がいる。
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そんな社員の名前は佐々木A。
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人員不足の応援要員として地方からやって来た社員だ。
前職ではトラベル系雑誌の校閲を担当していたそうだが、ファッション誌にはまるで無頓着。初の顔合わせもそれは酷いものだった。
外に出るには恥ずかしいレベルに薄い化粧、そうして地味な格好。《Moon》という名の知れたファッション誌に携わる社員としてのプライドなんてあったものではない。
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それだけじゃない。
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副編集長という立場の俺に歯向かってくるわ、
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こんな社員は初めてだ。…そして、今も。
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『もうてっきり帰ったのかと思ってました。』
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『それは奇遇でしたねー。こんなところで私と会うのは想定外だったと思いますけど、』
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まさに嫌味ったらしいとはこのことで上司には萎縮とかするだろ？普通は。佐々木に関してはそういうのが全然ないんだよ。
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俺が少しでも可愛いと思って、このくまのストラップを買おうとしていたと勘づかれたらこいつは面白おかしく思うに違いない。
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あ 「ふふ、」
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渡 「な、なんだよ。」
あ 「…いえ。副編集長って私が思ってるよりも結構子供なのかなって。間違えてたらすみません。」
渡 「まじで何言ってんの。これは俺が可愛いと思ったんじゃなくて、あーだから…」
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佐々木が相手だといつもの俺じゃ居られなくなる。
何でだ？俺に突っかかる奴なんてやはり珍しいからだろうか。
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…、…
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ｶﾁｶﾁｶﾁ､ウィンカーの音が鳴り響く。
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結局、購入したくまのストラップ。
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ハンドルに顔を突っ伏させるとどっと疲れが俺を襲った。
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『ちなみに、そのストラップ。私も一番可愛いと思いました。』
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『少しぶさいくだけどどこか愛くるしいというか、副編集長も同じ意見ですか？』
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渡 「…あぁ、同じ意見だ。」
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つか…、忘れてたけどこれアイツも買ったらお揃いじゃん。
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2024年1月21日 16時
