あざといアイドルに恋した。《Ryohei.A》

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阿部さんにいつかまた逢いたい…そう思い続けて早二週間。


里奈にも『来るわけない』なんて匙を投げられた。




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その里奈の言葉通り彼が現れる様子は全くもってない。


ただ、悲しいことに平常通りバイトは続いていく。




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『じゃあちょっと裏行ってるから、表頼んだ』


あ 「はい！」


22時。営業終了まであと1時間。この時間になると、常連のお客さんもポツリポツリと帰っていく。




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店長は、発注の仕事がある、と裏へ。




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あ 「ありがとうございました！」




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最後のお客さんが一人帰って行く。


店長も今は裏。


つまり、ホールにはただ私一人。




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一応、阿部さんがいつ来てもいいように、ポケットの中に忍ばせてあるんだ。


…そう。あの時もらった緑色のハンカチ。




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『俺は全然大丈夫だから。それより怪我ない？』




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『ああ、こんなの平気だから。それより制服汚れちゃったね』


『コレ。よかったら使って？』




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思い出して胸がキュッ…ってなる。阿部さん本当に優しかったなぁ。


あ 「…はぁ」


心のどこかでもう会えないって分かってる。




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ザァーッ…



それを象徴するかのように、さっきまで降っていなかったのに、雨が突然降り出しているのが窓から見えた。


それが神様にもう、諦めろって言われてるみたいで、なんかすごく苦しい。



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ハンカチ、返したかった。


出来ることなら少しでもお話してみたかった。




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あ 「雨ひどいしあと一時間だから…看板下げちゃおう」




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入り口の扉を開けて、メニューの看板を持つ。




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会いたかったよ、阿部さん。


またもう一度。




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そう入り口まで引き返そうとした時だった。





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『ハァ…間に合った。まだ開いてますか？』




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あ 「あ、はい！」




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なんか聞いたことのある声。


声をした方をゆっくり見ると、バッグを頭に掲げて傘がわりにしていた彼が。




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バッチリと目が合って、軽く会釈される。




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そう。


会いたくて、会いたくて…でも、もう会えないって思ってた、阿部さんが居た。




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