恋と君を知った季節

29 WINTER ページ29

冬。




急激に冷たくなった風は心までも冷やしていった。

と、同時に冬の訪れに寂しさを感じてた。





車内から覗く、いつだか紅葉をまた同じように車内で見た公園。

あんなに綺麗に赤にそまっていた葉は既に全て落ちていた。

…まるで、俺と藤ヶ谷みたいだ。



俺と藤ヶ谷の関係性もこの葉のように崩れ始めているのが分かってた。







藤ヶ谷の家を出て、1週間。



あの日すぐに電話がかかってきたけど…

俺は無視した。



出たくなかったからとかじゃない。

…出る勇気が俺にはなかったから。




だからと言ってちゃんと藤ヶ谷と向き合って話すのもできそうになかったから…

スマホを開き、メッセージを送った。





《にかの体調どう？すぐ無理するから気にかけてやって。それと…急にごめんな。俺、家に戻る事にした。今まで迷惑かけて悪かった。俺の物全部捨ててくれていいから。》




一方的な文だって事分かってる。

…けど、これ以上の文なんて…考える余裕が俺にはなかった。





すぐに既読になって…

それは返事が返ってくることなく終わった。







あの日から時計の秒針が止まったみたいに…

何も楽しくないし、上手く笑えない。





当たり前だけど、藤ヶ谷とは顔を合わせづらいし。

気付けば…藤ヶ谷を避けてた。




藤ヶ谷のそばに居るだけで

好きと愛おしさが溢れてしまうから。





本当は気づきたくなかった。

こんな想い、気付くつもりもなかった。


きっかけが無ければこの想いも気づくことなく終わったかもしれないのに…

どうして気づいてしまったんだろう。




こんな年で本気で恋をするなんて馬鹿げてる。


…そう思ってたのに、

本気で恋をしてしまった。





きっと今俺が何も言わなかったら何事もなかったかのように時は流れていくだろう。

この気持ちを隠せば…。






…別に俺は弱くない。


女子じゃないし、こんな気持ちを仕事に持ち込んで仕事が出来ないなんて事は無い。

仕事はちゃんとやるし…。




プラベでもバレないようにいつも通り装う事ぐらいできる。


…俺はそんなに弱くないから。








…もし俺がか弱い女だったら愛してくれた？






そんな事を思ってしまう俺は馬鹿だ。


隠し通すって決めた恋なのに。






強がってしまう俺は、一人で生きたい訳じゃないのに…

一人になりたかった。





もう何も考えたくない…


藤ヶ谷の事を考える事も諦めてた。

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