まだまだ鍛錬不足です 番外or短編【鬼滅の刃】【煉獄杏寿郎】

3 ページ3

「先日、近くの村で捨て猫を見つけられたそうです

　その猫を飼ってくれるものがいないか探しているみたいで・・・

　あいにく隊士のほとんどは孤児や家族のいない者たちばかりなので
　俺もそういう知り合いはいなかったのですが・・・」



彼と話すときは”注意する”





　 ーー ”A”という言葉は出さないように ーー







　 出してはいけない




　 呼んではいけない







彼女の名を呼ぶだけで、勘のいいものは瞬時に彼の周りから
”よくない気配”がでていることに気づくだろう





　ーー 気づかず話し続けるものは 後日悪夢にうなされる







「ふむ、そうか・・・ ネコか」


そういって腕組みしたまま考えだす目の前の彼は 居心地の悪い顔をする



　俺は彼女に以前あったことを知っている

　きっかけが目の前の炎柱に好意をもっていた女性達であったことも・・・



「誰か一緒に猫を探してくださる方だけでもおられればいいのですけれど・・・」


その言葉の中にも決して「炎柱様が」とは言わない



　俺はそういう立場でもない


　柱に行動を指図できる身分でもないし、度胸もない




俺の言葉言葉に炎柱様はじっと俺を見る

彼が目を細めたのにすら「何か言葉を間違えたか？」と己の言葉を脳裏で繰り返す


　・・・いや、ないはずだ

　彼の神経を揺るがすような言葉は・・・



「君はかしこい人間だな」と彼が静かにつぶやいた

その声はいつもの声とは違い、どこか背筋が寒くなる


彼からずっと感じていた威圧が少々和らいだのに気づいた

彼が「有難う」と俺の横を通り過ぎる




　「だが油断せぬように」



　 小さくそう・・・聞こえた気がした





「・・・」





柱は恐ろしい



　”それは皆同じ”







　 だが・・・








「！ A！」





　「・・・」




炎柱様が背後で嬉しそうにその名を呼んだ

俺はその先にいるであろう彼女を見るでもなく そのままその場を即座に離れる

遠ざかる




Aは 炎柱のあの重い・暗い感情に全く気付いていない

そしてその暗い”何か”さえ、彼女は無意識に閉じ込める



あの”魔獣”を手なづけている

普通に会話をする

より魔獣を溺れさせる



ああ・・・ 恐ろしい 恐ろしい






　 真に恐ろしいのは 彼女の”無意識”である






その無意識が周りを巻き込んでいることにいい加減気づいてくれないものかと

隊士の中では頭を悩ませるものが最近多い

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す