好きな人 ページ39
(tatsuya side)
「……そこ、トイレじゃないよ?由菜」
『、ふっか……』
泣くのを堪えるような顔で会議室を出て行った由菜を放っておけなくてその後を追えば、誰も使ってないレッスン室のドアに手を掛けた彼女。
呼び止めた俺の声に振り向いたその表情からは上手く感情が読み取れなかったけど、追いかけて来たのが俺って事にがっかりしてないといいな……なんて。
『……はは、見つかっちゃったね』
「……言ったじゃん、辛い事あったら俺んとこ来てよねって」
『……うん、』
『そうだったね』なんて力なく笑った由菜の手を引いてレッスン室の中に入れば、彼女はその閉まったドアに背を預けて。
下を向いて数秒黙った後、『ねぇ、』ってゆっくりと口を開いた。
『……こないだの話、』
「え、?」
『新幹線で私に聞いた、好きな人いるの?って話……』
「……うん、」
『……分かっちゃったかな、』
「………………うん」
……翔太、って事なんだろうなって。
言葉にこそしなかったけど、頷いた俺に由菜は困ったように笑った。
『翔太の隣にはAがいるって、そんなの分かってたはずなのに……』
「……」
『はは、……いざこんな風に現実突き付けられると、ちょっとしんどい……ね、』
泣きそうな顔を隠すようにまた俯いた彼女に、俺も胸がぎゅっと締め付けられる。
……やんなっちゃうよね。
別に付き合ってはないじゃん、とか、事情あったみたいだし、とか、
フォローの言葉は色々浮かぶけど、きっと何言ったってどうしようもないんだもん。
だってどんな事情があったにしろ、2人が一緒に夜を明かしたのも、そのくらい親密な関係だってのも、全部変えようのない事実だから……。
『なんでよりによって翔太を好きになっちゃうんだろ……』
「由菜……」
いつも以上に華奢に見えるその体を、俺はただそっと抱き寄せる事しか出来なくて。
『……もういい加減、こんな気持ち捨てちゃいたい……』
俺の腕の中でそう弱々しく呟いた由菜に「俺が捨ててあげるよ、」なんて……
もしもそんな台詞が言えてたら、由菜と俺の関係も、少しは変わったのかなあ。
.
238人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すかる(プロフ) - ひろかずみつすけさん» →思います。曖昧なお返事ですみません。コメントとても嬉しかったです! (2022年11月15日 20時) (レス) id: a4205199bd (このIDを非表示/違反報告)
すかる(プロフ) - ひろかずみつすけさん» 読んでくださり、またコメントまでありがとうございます。仕事が忙しくなり執筆を一度中断して以来同じように書ける自信がなくずっと更新しないままになっており大変申し訳ないです。続きは書かないと決めた訳では無いので、また更新されていたら読んでいただけたらと (2022年11月15日 20時) (レス) id: a4205199bd (このIDを非表示/違反報告)
ひろかずみつすけ(プロフ) - とっても面白かったです。続編はもう書かれないですか? (2022年11月15日 6時) (レス) id: d2c3399ce2 (このIDを非表示/違反報告)
すかる(プロフ) - reeeiiiさん» こんばんは、いつもご覧いただきありがとうございます> <!これからもギュッとしていただけるように頑張ります☆コメントありがとうございました!! (2021年3月5日 23時) (レス) id: adb2c5fada (このIDを非表示/違反報告)
reeeiii(プロフ) - こんばんは。いつも更新楽しみにさせていただいてます!胸がギュッとなってきました!次回更新も楽しみにしてます! (2021年3月5日 21時) (レス) id: f41e0f4c92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すかる | 作成日時:2021年1月22日 21時