Snow×Snow

心配 ページ18

(shota side)



”「今回は佐久間と鈴波にお願いしたいなって」“



それ聞いた瞬間、いやマジかって気が気じゃなかった。


これまでメンバー内で恋人役なんて片手で数えるほどしかなかったけど、頼まれるのはほとんど俺とAで。

まあ佐久間はなんでも器用にこなすし、由菜も最近ドラマとかちょくちょく出るようになったから適任だとは思う。思うけどさ、

…………俺が心配なのは、隣で平気なフリして笑ってるAで。



「…A、」

『ん？』

「……大丈夫か？」



打ち合わせ終わり、みんなが会議室を出て行くのを横目にさり気なく腕を引いて問い掛ければ、Aは『別に大丈夫だよ？』なんて困ったように笑った。

あぁ、この顔全然大丈夫じゃないやつだ。なんで強がるかなあコイツは。



「……いいわけ？」

『いいも何も仕事だし……、キスだってフリって言ってたじゃん』

「そうだけどさ……」

『さすがに仕事の事まで落ち込んでたらキリないもん、全然大丈夫だよ』

「……」



いや、そうだよ？確かにお前の言う通り仕事だけどさ。

でも、佐久間が由菜の事好きなの分かってんのに。それ分かってて、そんな2人の恋人役なんてお前見れんの？って。

別に俺の前でくらい、素直に嫌だって言えばいいのに……
なんて、いざ言われたら受け止めて頭撫でてやる事しか出来ねぇんだけどさ。



「…………無理すんなよ、？」

『ん、ありがと。私達もダンス頑張らないとね』



色々言いたいのを堪えてそう一言だけ言えば、今度はちゃんと笑顔を作って俺に背を向けたAに俺はそれ以上何も言えなくて。

……まあ確かに仕事なのにいちいち言っててもしょうがねぇのかなって、釈然としない思いを抱えつつもAの背中を追いかけた。




数週間後、出来上がったMVがあんなものになるとは思いもせずに…………。




.

MV鑑賞会→←MVの打ち合わせ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す