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「ララ……いたいのいたいのとんでけ…!」
ウタはそう言うと私の頭を撫でた
「…ありがとう、ウタ」
ウタは私の事を心配してくれてるの
私が体調を崩したから。だから来てくれた
“あんなこと”思っちゃダメ
さっき浮かんだ感情を打ち消すために私は笑った
両手で手を組み、胸の前で静かに心の中で祈った
願った。私は良い子。そんな事思っちゃダメ
ウタはまだ小さい子なんだよ。仕方がないんだよ
だけど。でも。それでも
許せないことがあっても、怒ってはいけないのですか?
神様
「これ。何?」
ウタはベッドの横、サイドテーブルの棚をいつの間にか開けていた
そして触っていた。私の何よりも大切な宝物を
「……なに…してるの…?」
「可愛いこれ!ララ、ちょっと付けてもいい?」
「……え……………?」
ウタの手にある“それ”
それは私がシャンクスから貰ったこの世でたった1つの贈り物
初めて私にくれたもの
桜のモチーフのデザインになっている、髪留め
桜貝が1枚ずつ桜の花びらになっていて、シャンクスがくれた、たった一つのもの
「………やめ…て……………」
唇は震え、気づけば口に出していた
いつもの『いいよ』が来ると思っていたウタは「なんで?」という顔をする
「やめて…お願いそれだけはやめて!!」
ウタの手を握り、私は髪留めを取り戻そうとした
今思えばちゃんと言えば良かったのかもしれない。乱暴な手段だった
「なんでダメなの!ララのケチ!」
「………………………は?」
『ケチ?』
なにそれ。なんでそんな言葉が貴方から出てくるの?
私の中で、酷く軋んだ何かがザワザワと胸に上がってくる感じがした
“なんでお前にケチなんて言われなきゃいけないの?”
“いつも奪っていたのは、お前じゃないか”
気づけば、私の手は空を裂き、激しい皮膚と皮膚の衝撃音が部屋中に響いた
「あ…れ…………?」
ベッドの下では小さく縮こまり、怯えた顔でこちらを見ながら左頬を抑えて涙を目いっぱいに溜めているウタがいた
「ウタ……わたし……あ……………」
「う…うわあああああああん!!!」
なんで
なんで私は。どうして。こんな事を
「どうした!」
「あ……………」
シャンクスが扉を開けて慌てた様子で入ってきた
あ。ああ。ああ。ああ
声が出ない。違う。違うのシャンクス。私
私はただ
「ウタ!どうした!?」
無情にも、今のシャンクスの目に映っているのは泣き叫ぶウタだった
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