おねえちゃんだから. (ページ42)

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#42 ページ42

翌日

私はマキノさんの酒場で一晩過ごした

誰もいない酒場は昼間と比べて静かすぎるぐらいだったけど。とても落ち着けた

朝になるとぞろぞろと赤髪海賊団の船員が顔を出しに来た

また朝から飲み過ごすのか…

そんな船員を横目に私はマキノさんの手伝いをした

一晩の恩義というのもあり、自分から申し出た

マキノさんは『大丈夫だよ』と言ってくれたけど

私はちゃんとお礼をしたかったから。せめて自分の出来ることをしようと思った

船に戻ったところで機嫌の悪いウタとそんなウタに手を焼く彼等の視線が想像出来る

ウタからの『謝って』という視線と
シャンクス達による『謝ってほしい』という視線

…昔は自分がしっかりしなきゃと。おねえちゃんだから先に折れてあげなきゃと。思ってたから

素直に謝れた

でも今は。1mm足りともそんな感情は湧かない

散々謝り尽くした私に。これ以上何を謝れと言うのか

それに昨日の出来事は先に手を出したウタが原因

私は謝るような事はひとつもしてない

テーブルに置かれた空の瓶を片付けて、新しいものと取り替えようとした時だった

「ここにいたのか。ララ」

「…………………」

背後から声が聞こえる

誰の声かは分かってる。だから敢えて

聞こえないふりをした

顔も見たくない。嫌だ

空になった瓶を抱え、カウンターの内側に入ろうとした時だった

「こっちは私がやっておくから。行っておいで、ララちゃん」

ニッコリと笑いながら空になった瓶を私の手からかっさらうマキノさん

気を回したつもりなのだろうけれど。今はその気遣いが余計なお世話以外の何ものでもない

「………はい」

“いつもの愛想笑い”

浮かべて。私はゆっくりと振り向いた

「…なあに。シャンクス」

もう怒ってないよ。昨日の私も悪かったかも

そう思われるような微笑み(えみ)を浮かべた

「話があるんだが…出直した方がいいか?」

シャンクスは少しばつ悪そうな顔で言う

そんな顔したって魂胆は見えている

『お姫様』の機嫌が直らないから音を上げたんでしょう

どうにかしてくれ、と言わんばかり

「いいよ。マキノさんから許可を貰ったから」

「分かった。少し外に出よう」

「…うん」

シャンクスは先に背を向けて酒場を出る

私は少し間を空けてシャンクスの後をついて行った