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#41 ページ41

酒場に入るとルフィくんの怪我を見たマキノさんが慌てて駆け寄ってきた


「何があったのルフィ!?」


「こ、転んだ」


「!……」


「転んだの?」



意外なルフィくんの一言にちょっと面食らう

女の子に突き飛ばされた、というのを隠したいのか

それともウタを庇ったのか



どちらにせよルフィくんはマキノさんに『転んだ』
と嘘をついた


ならばその嘘に合わせてあげよう



真意はどうあれ、彼が『転んだ』と言ったのだ



敢えて『違う』と訂正することも無い




「こっちにきて。手当するわ」



ルフィくんはマキノさんに連れられて椅子に座らされ、手当をしてもらった



私は酒場の入口付近に出てボーッとただ空を眺めた


赤髪海賊団の姿はなく、恐らく船に戻ったのだろう


“大事なお姫様”を慰めるために




「…………何やってるんだろう…」



今までひた隠しして“おねえちゃん”を演じてきたのに


先程のやり取りで全てを台無しにしてしまった


でも。不思議と後悔はなかった



多分。もうどうでもよくなったのだ。本当に



彼らの顔を伺って笑顔でいるのも


ウタの機嫌を損なわせない為に笑顔でいるのも



もう。疲れた






『“良い子”』でいるのはもう疲れた





「ララ……」


「!…ルフィくん。もう大丈夫?」


「うん…」


そこへマキノさんに手当をされたルフィくんが入口に出てきた
ルフィくんは私の手を掴むとギュッと握り




「おれのせいで……ごめん゛なざい゛……!!!!」



「!…どうしてルフィくんが謝るの?」




ルフィくんの視線に合わせて私はしゃがみ、彼の顔を見た

ルフィくんは目いっぱいに涙を溢れさせ、鼻からは鼻水が出てしまっていた




「だっで…おれ゛のぜいでッ…ジャングズどララ゛が…げんが……しぢまっだ……!!!」



「!?………」




『だがら゛ごめんな゛ざい゛』





「…………………」


ルフィくん……

君は、優しいんだね



優しいから、こんなに泣いてくれるんだね


ルフィくんは目いっぱいの涙をボタボタと床に落としてゆく
大きい口を開けて、泣いた




こんな小さな子が。『ごめんなさい』と


自分が悪いんだと



そんなこと。思わせたくない



君に同じ様な思いはしてほしくない


「ルフィくん。謝らないで?」



君は悪くない



「シャンクスも私も、頑固になっちゃっただけだから」



だから君は泣かないで



「だから。君が悪いことなんてひとつもないんだよ」



優しい君だから



「どうか。自分が悪い事したなんて、思わないで?」



君には自由で居て欲しい

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作者名:さなら | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2022年9月23日 0時

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