おねえちゃんだから. (ページ40)

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「ひっ…く……ううっ………」

ウタは相変わらずべそをかき、ヤソップさんやルゥさんに宥められている

……勝手に可哀想がられてればいい

私はシャンクスとベックマンさんに背を向けてルフィくんの元へ行く

ルフィくんは泣くのを必死に堪えていた

「…泣かなかったんだね。偉いよ、ルフィくん」

「う゛ん……っ」

でも黒い瞳いっぱいに涙を溜め込んでいた

私はルフィくんの頭を撫でながらウタを見た

“それに引替え”という意味もこめて

ウタは視線に気づくとばつ悪そうに顔を逸らした

どっちがお子様なんだか

「！……ルフィ。怪我をしたのか?」

シャンクスはやっとルフィくんの異変に気づいた

大事な大事な愛娘しか見ていない。状況さえもちゃんと掴めずに一方的に私に怒りを向けた

何が船長よ。馬鹿らしい

「…見て分からないの?ルフィくんはそこにいる“お姫様”に突き飛ばされて怪我をしたのよ」

「！……そうなのか、ウタ」

ヤソップさんに聞かれてウタは顔を俯かせる

都合の悪いことはそうやって黙る
いつもの手だ

いつもなら私が折れて『謝り』、その後に自分も謝る

先に謝りたくないという無駄に高いプライドは正に“ワガママなお姫様”

「……状況判断もちゃんと出来ないなんて、よく父親なんて言えるね」

「なっ…！？」

じとりとシャンクスを睨む

シャンクスは何も言わずに黙っていた

ばつ悪そうな顔をして

「ルフィくん。マキノさんのところに行こ？」

ルフィくんは涙目になった目をごしごしと手で擦りながら頷く

私はルフィくんの手を引いてマキノさんの酒場へと向かおうと歩き出す

すると

「待てララ、どこに行く」

「決まってるでしょ?ルフィくんの怪我の手当をするの」

「なら俺が……」

「そっちには“お姫様”が居るでしょ。そっちを優先してあげたら?」

「おいララ！！」

シャンクスの言葉を無視して私はそのまま酒場の入口まで向かう

ああ。それと一言言わなきゃ

「私。今日は船に戻らないから」

それだけ。私はルフィくんとそのまま酒場の中へ入った