#39 ページ39
「またウタを打ったのか！ララ！！」
「……………………」
“また”
その言葉に感情が削ぎ落とされるように感じた
いつもそうだった。私が何をしてなくても
泣き出したウタを心配して。泣かせた私に非があると
彼らは…シャンクスはいつだってそうだった
真っ先に泣き止まないウタに駆け寄り、落ち着かせる為に抱きしめる
“あの時”だってそうだった
「…何って……見て分からない?」
「ああ。分からないな」
シャンクスはウタの傍に来ると宥めるように頭を撫でる
「ジャングズ…いだいよぉ……」
ウタは赤くなった頬を抑えながらシャンクスに泣きつく
「そうだな。痛かったな……」
シャンクスはウタの頬を摩ると私を困った目でみてきた
ああ。そうなのね
“結局こうなるの”
「ララ…何があったかは分からないが叩くのは良くない。暴力で解決はしてくれるな」
「……海賊なのに暴力は良くないって説く訳?」
「そうじゃない。時と場合であってだな…」
「そうね。その“天使”が傷つけられるのは嫌でたまらないものね」
「…なに?」
もういいや。この際よ
もうどうでもいい
「可愛い
「オイ、ララ！！」
シャンクスは怒気をあげて声が荒くなる
そして私の肩を掴み、険しい目で私を見た
「………打てば?私がそこの“お姫様”にしたように」
「っ！！」
もう何も感じない。別にもういい
彼らに捨てられようと切り離されようと
もうどうでもいいのよ
今更思い出した
私は“姉”という立場以外に、失うものはもう無いのだと
シャンクスは何かを言いたげな顔をしながら険しい目で私を見る
貴方の目にうつる私は、どう見えているのか
私はただ無機質な目でシャンクスの目を見た
今ここで打たれようと。きっと何も感じない
「一旦落ち着けお頭。ララもだ」
そこへ沈黙を破ったのはベックマンさんだった
間に入り、私の肩を掴むシャンクスの手を離す
「お頭。熱くなるな。ララもだ」
「……悪い、ベック」
「……………………」
シャンクスは髪を掻きながら私を見る
私はただ無表情のままでいた
いつもの“笑み”を浮かべる気力さえ、なかった
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