おねえちゃんだから. (ページ38)

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#38 ページ38

「＿＿＿＿＿＿＿＿」

その言葉に私の中で酷く亀裂が入った

なに、いって、るの………?

貴方が、それを、言うの……?

他の誰でもない貴方に、私が今までどれだけ傷ついてきたと思って＿＿＿＿?

ふつふつと溢れる熱に身体が震える

「＿＿＿ウタ。謝りなさい」

「え…？」

「ルフィくんを……突き飛ばして怪我をさせたのよ。謝って」

「…っなんで？」

『私悪くないもん』

そう言うとウタは腕を組み、そっぽを向く

“私は悪くない”

……ああ。そうだった

貴方、そういう子だった

自分が悪くても直ぐに泣き、いつもシャンクスや他のみんなを味方につけた

そしていつも言われる決まり文句

『ララは“お姉ちゃん”なんだから、な?』

…………………ふざけないで

「謝って」

「………イヤ」

「…謝りなさい」

「…イヤ」

「ウタ！！」

「イヤ！！！！」

「っ＿＿＿！！！」

声にならない怒り

私の右手は空を裂き、ウタの頬を強く叩いていた

あの時とは違う。“明確な意思”で

彼女を打った

「……っ！！」

ウタは大きな瞳を更に大きくさせて私を見上げた

『なんで？』というような顔で

そして目いっぱいに涙を貯める

「なん、で…ララ……っ」

「……………」

なんではこっちの台詞

貴方こそ。なぜ自分の過ちを詫びることが出来ないの?

「うっうっ…ううぅ……っ」

ウタは両手で目を抑えながら泣き始めた

ああ。まただ

この不愉快な泣き声。何度も聞いてきた声

私が『ごめん』と言わない限り、ウタは泣き続ける

そしてそれを見兼ねて彼らが言うのだ

『“おねえちゃん”なんだから。な?』

『譲ることも大事なんだ、ララ』

『ウタはまだ小さいから分からないんだ』

『おねえちゃんとして。お手本を見せてやってくれ』

おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん

“ウタ”と口にした次には『おねえちゃんなんだから』とお決まり

そんな言葉で私は5年間押さえつけられた

12の時に自分にずっと言いかせていた『ウタはまだ小さいから』

あの日から2年

不思議と感情は欠落した

もう何も思わない。感じない。求めない

そうすれば“楽”になれるから

だけど。込み上げてくるこの久々の“これ”は

怒りだった

それも。ウタだけではない

「何やってるんだララ！」

彼らにも強い怒りを＿＿＿＿＿抱いた