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「す…………すげぇーーーっ!!!!」
歌い終わると同時に目をキラキラさせて大きく口をぱくぱくさせながら興奮するルフィくん
そんなルフィくんの姿が面白くてつい笑ってしまう
「な、なに笑ってんだよ!」
「ごめんね……ルフィくんの反応、面白くて」
すると「人がかんどーしてるのに!!」と怒られてしまった
大きく口をいの形にして怒る姿はまた更に可愛げがあり、笑いそうになってしまう
だけどルフィくんにポカポカされたのでそろそろ笑うのを我慢した
「おまえすげぇ歌上手いじゃんか!!」
「……ありがとう。嬉しいよ」
「ウタの歌も好きだけど、おれ、お前の歌もっと好きだ!!」
「!………………」
“もっと好きだ”
そんな事初めて言われた
いつも大前提である、“ウタの歌”
ウタが歌う度に皆、口々に褒めて言った
美しい声だと。可愛らしい声だと
“天使の歌声”だと
本当のことだから。私はただ黙るだけだった
“天使”だなんて、今まで誰にも言われたことないし、それこそ赤髪海賊団の誰からも言われたことなんてない
実力。そんなのじゃない
ウタの持つ天性の才能
そういうことなんだろうなと。自分の中で納得させてきた。今まで
誰も彼もが彼女の“歌声”を褒めてきた
「なぁなぁ。ウタがよくお前に歌ってくれって言ってるけど」
「!うん…、」
「なんで歌わないんだ?」
「…………そうだねぇ」
歌わない理由……その答えはもう既に出ている
“認めたくない”のだ。まだ
分かってる。自分の性格が歪んでいるんだと。素直に喜べない自分も、笑えない自分も。全部
全部、全部、全部。私の“わがまま”なんだと
自分がまだ“お子様”で大人になれていないからだと
「……意地悪かな」
「なんでそんなことするんだ?」
「ふふ……なんでかな」
「なんでだよ?」
「…………何となくかな」
曖昧な答えしか出せない
ウタに“唯一”をとられた。シャンクスが離れていった
みんながウタ“だけ”を見る
妬み。嫉み。それらがぐるぐると混ざって意地になり。固まっている
結局独りを自分で選んで、勝手に僻んでいるだけ
分かってる。そんな醜い自分が“天使”だなんて言われるはずもない
「…今回だけ。君の前だから歌ったの」
だから
「だから。他の人には内緒だよ」
ルフィくん
「『約束』だよ?」
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