#34 ページ34
真っ直ぐにぶつけられた当たり前の疑問が
私の心に清々しい位に穴を開けた
でも悪いものじゃない。寧ろ
“私”という存在を認めた上で“否定”してくれたように感じたから
「あははは……なんか、もうどうでもいいとさえ思えちゃうかも。今なら全部」
私もゴロンとルフィくんの横に寝転がり、大の字になった
「…………可笑しい、か。うん。そうだね。これは“可笑しい”んだ」
“可笑しい”という言葉は妙にしっくりきて、落ち着いた
「お前も歌を歌うのか?」
「…………どうかな」
“歌を歌うのか”
という質問に対して曖昧に答える
歌は歌っていた。昔に
でも今は“あの場所”は私からウタへと変わった
“歌”を歌うこと自体に。自然と嫌悪感を抱くことになった
ウタの歌を聴くことも。肌に棘がチクチクと刺さるような感じになる
聞いていて不愉快にしかならなかった。ずっと
ウタによく“歌って欲しい”とせがまれるけれど
何かと理由をつけて歌わなかった
「…………………………」
あの時は歌う事“だけ”は譲りたくなかった
だけど音楽家の歌い手という立場がウタのものになった以上、私が歌を歌う理由もなくなる
私の海賊としての居場所はあの日消えたのだ
「なーなー！ララ！」
「！……なに?ルフィくん」
ぼーっとしてしまいのルフィくんの話をちゃんと聞けてなかった
「お前の歌聴いてみてェ！歌ってくれよ！」
「え……」
ルフィくんは目を輝かせながら私の顔を見る
“歌って”か…
ウタに言われる度に嫌になる言葉
『“聴きたい”』『“歌って”』
だけど。ルフィくんから言われると
そんなに嫌ではないなと感じた
何故か分からないけれど
“悪くないかも”
そう思ってしまう
「……いいよ。私の歌、聴いてくれる?」
夕日に照らされた海が橙に染まり始める
私は息を吸い込むと、ゆっくりと言葉を奏でた
一つ一つの音を丁寧に
何年ぶりかに声に出した“
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