#33 ページ33
「＿＿＿＿＿＿え？」
突然何を言い出すかと思えば
ドクンと一瞬心拍が上がった
「なんで、そう思うの？」
動揺しないようにと必死で平静を保った
彼の放った言葉は、間違いなく“核心をつく”言葉だった
「変だぞお前！いつもニコニコしてて！面白くもねえのに！」
「……………………」
“面白くない”
その言葉には納得する
ええ。面白くなんてない。ただ笑っているだけなんだから
でも面白くないなら。笑ってはいけない理由なんてないでしょ？
「面白くもねえのに笑えねえよ！笑うっつうのは楽しかったり嬉しかったりする時だろ！お前はいつも楽しくて嬉しいのか！」
「……………………そんな訳ないじゃん」
ボソリと小さく呟いた
楽しい訳が無い。嬉しい訳が無い
ただ“微笑んでいる”だけ。なぜか？
みんな気を許してくれるからだよ
私が笑顔でいれば。大抵の事は何も起きない
ウタの癇癪も起きないし。誰にも迷惑をかけない
だからだよ。顔色を伺って自分を保ってるだけ
それの何が悪いの？
「だっておかしいだろ！なんで何も楽しくねえのに笑ってんだ！それに俺！お前のその笑顔、仮面みたいで好きじゃねえ！」
「＿＿＿＿＿＿＿」
『“仮面”みたい』
そう言われた私の中で
何かが弾け飛んだ
「………………あは……」
そうだ。そうなんだ
仮面＿＿＿彼から見る私の笑顔は仮面なのか
ああ違う。そうじゃない
“可笑しい”んだ
当たり前にしてきた事を真っ直ぐに否定された
だけど不思議と。嫌な気はしなかった
今まで誰1人にも。そう言う人はいなかった
“お前はおかしい”、“なぜ笑う”
そう言う人は今までいなかった
みんな私の笑顔に“安堵”して、何も言う人はいなかった
分かっていてもきっと言わないだけ。内心思ってるだけ
普通はそこまでだ。それ以上何も言うことなんてない
だけど。この少年は
私を“可笑しい”と言ってくれた
私を1人の“対等な人間”として。言ってくれた
真っ黒い瞳は私のくすんだ黒い瞳を真っ直ぐ見つめ返してくる
「……ふふ…そっかぁ………君にはそう映るんだ、私って」
「？……なにがだ？」
「ああうん……なんでもないよ。私の話」
普通なら逆上とか。怒りがふつふつ湧いてきそうだけど
そんな怒り等は感じず。寧ろ彼の一言で
『空っぽ』になれた気がした
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