おねえちゃんだから. (ページ31)

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#31 ページ31

“ララと一緒に歌いたい”

その言葉に酷く嫌悪感を抱いた

“今の私”にとって1番聞きたくない言葉

いつも思うがままにしているのに
これ以上まだ私に求めるのか

私は“歌う”以外の事なら基本なんでもウタにしてあげている

そうしておけばウタ自身、何も文句を言ってきたり怒ったりすることもない

“歌う以外”の事を彼女に捧げれば、何もかもが楽に感じるから

彼女を愛する父親達にも何も言われないし迷惑もかけない

お互いに困ることなんてないのだから

「けれどウタ。ウタはさ、“いつでも”私と一緒に居られるでしょ？」

だから

「だから。たまにはルフィくんに譲ってあげよう？ね？」

『ウタの方が“おねえちゃん”でしょ？』

そう彼女に伝えるとウタは黙り込んだ

私が心の底から嫌悪し、忌み嫌う言葉を使った

茨の様にまとわりつく、嫌でも聞いたこの言葉

ねえ。貴方は言われたらどんな風に思うの？

ウタは暫く黙り込んで私の顔をじっと見つめる

その瞳には『なんで』『どうして』と訴えるような目

子供が大好きな玩具を取られて悔しくて悲しい、怒っている目

ウタはルフィくんの方をじっと睨むと

「1度だけなんだからね！！」

そう言うとそっぽを向いて酒場の方へと歩いていった

「ララ！一緒に行こうぜ！！」

「！……いいよ。ルフィくん」

ルフィくんは私の手を引くと走り出す

楽しそうに笑いながら

そんな彼の純粋な姿に、不意に

「……ふはっ……可愛いね、ルフィくん」

笑いが出てしまった

……………あ…

いつぶりだろう。こんな些細な事で笑ってしまうのは

ふと口元を左手で覆う

そうだ。私いつもニコニコしていて……

当たり前に“笑み”を浮かべることに、慣れてたんだ

だから。ただ何気ないことで“笑う”ということが

「……………………」

こんなにも“嬉しいこと”だったなんて

今更、知ってしまった。否

思い出してしまった

「着いた！ここだ！」

ルフィくんに手を引かれるがままに私はそのまま走り続けていた

けれど目的地は全然聞いてなかった

その場所は

「ここは＿＿＿＿＿…」