おねえちゃんだから. (ページ22)

今日:330 hit、昨日:395 hit、合計:1,549,131 hit

#22 ページ22

動かない身体は見えない大きな手で押さえつけられているようだった
だんだんと瞼は重くなり、視界がぐにゃりと曲がり出す
目眩と更には頭痛が響き出した

「……ッ〜…!!」

あまりの痛みにその場で蹲った
痛いよ。痛いよ。痛い
誰か。誰かお願い。私の身体を起こして

目だけをゆっくりと動かす
だけどこういう時に限って。人はいない
誰もいないのだ。私の周りには

1人だけぽつりと。その場に居るだけ

まるで冬に取り残された芋虫のよう

「……は…………」

笑いなのかなんなのか。乾いた声が喉から出た

何故自分ばかり?と呪った。そんな感情はずっと捨ててきた

何も感じないようにしてきた

望んだって手に入らない
期待したって手に入らない
求めたって手に入らない
声を上げたって手に入らない

＿＿＿どうせ。聞こえてくれないのだから

私の声だけを奪うこの世界が。大嫌いだ

久々に溢れ出る黒い膿のような感情

ああ。ずっと前にこんな思い抱いたっけ

こんなどろりとした汚泥を。私はいつから抱えたのか

ただ笑ってきた。笑うだけにした

そうすれば。何も起こらない。ウタだって幸せ

シャンクスやみんなだって幸せ

私の“たった1つの不満”が全てを壊すのなら。だから飲み込んだ
全部。全然全部全部全部。飲み込んだ

でもその方が楽だった。最初から期待なんてしなければ

“諦めるってこんなに簡単なんだ”と

“楽なんだ”と

12の時に知った

だからもう何も感じなくなった。感じない方が楽だから
ただそこに在るだけでいい。“ウタの姉”という役割だけを持つ、機械のように生きていればいい

そうすれば私は傷つかないし、辛くない。苦しくない
泣かないですむ

そう望んだ。なのに

日に日に“重み”は増すだけだった

そう。今のこの状態のように

「……ばかみたい…」

見っとも無い。醜く生きて足掻く
誰がこんな醜いアヒルに手なんて差し伸べるか

誰もいない。誰もいないんだ

なんで忘れていたんだろうか

土の冷たさを感じながら私はゆっくりと瞼を閉じる

ああ。いっそのことこのまま

この土の冷たさの様に。私の体も

＿＿＿＿冷たくなってしまえばいいのに

「おい！ララ！！」

「………ぁ…」

突如。名前を呼ばれる

視界に入るは黒髪と。煙草の香り