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#15 ページ15

当てはまらないパズルのピースのように

積み上げたジェンガが崩れるように


私の(なか)で大きく音を立てて、壊れていった


その瞬間。プツリと。張った糸が切れるように


もう何も見えなくなった

見たいとも思えなくなった


ああ。もう。どうでもいいや


弾き出されたおはじきのように

転がされるビー玉のように


私の心が流れた


ウタの眩いばかりの笑顔が。黒く塗りつぶされてゆく

いつの日かのシャンクスの笑顔が。黒く塗りつぶされてゆく

いつかベックマンさんがくれた言葉が。黒く塗りつぶされてゆく

ヤソップさんがくれた優しさが。黒く塗りつぶされてゆく

みんなの声が。黒く塗りつぶされてゆく


もう。何も聞こえない


私は地面に縫い付けられたかのように。ただその場に立ち尽くした

聞きたくない歌を。声を

ああ。

なんて自分勝手

今まで嫌だったこの黒くて汚いものが

何故か今は心地よく感じてしまうなんて


ウタは歌い終わるとシャンクスやベックマンさんの元へ駆け寄る

「上手かったな!ウタ!」

「流石だな」

「第2の歌姫の誕生だ!」


ウタを褒める言葉がきっと流れているんだろうけれど

私の耳にはそんな声さえも。遮断されてゆく


太陽が陰る。その日陰は私を暗闇へと飲み込む

まるで“お前の居場所はここだ”と言わんばかりに


「ありがとうみんなー!」

ウタは嬉しそうに笑っている

昔はその笑顔が太陽のように眩しくて、キラキラと輝いていて私の心を照らしたもの

だけどその笑顔さえも私の心を酷く(ひび)入れる

ウタは私の存在に気づくと小走りで向かってくる


ああ。また褒めてあげなきゃ

『とても綺麗だった』『私よりも凄く上手だよ』


そんな言葉を心の中に浮かべる

彼女の為に用意する言葉(しょくじ)


きっと純粋にその言葉を頬張るんだろうね



「ララ!私の歌、どうだったかな?」

期待の眼差し

「うん」

穢れなき純粋な瞳

「とても」

綺麗なアメジストの瞳

「上手だったよ」

その瞳と私の瞳が重なる

「本当!?良かった…!」

「うん…とても綺麗で私よりも上手だよ」

「え!?そ、そんな事ないよ…ララの方が歌上手だもん!」

「……ふふ。ウタは良い子だね。謙遜なんてしちゃって」


惨めで目眩と吐き気がした


「ごめんねウタ。ちょっと部屋に戻るね」

「え?…うん…また戻ってくれる?」

「…うん。“また後で”ね」


世界で一番信用出来ない嫌いな言葉を使う

とても皮肉だね。私

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作者名:さなら | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2022年9月23日 0時

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