シルエット

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約束通り、見学はしてくれてるけど・・・

神ちゃんは、

最初の方こそ、ちゃんと見ててくれたけど、
そんうち、仰向けんなって、寝転がってさ。

絶対に寝てる。


サッカー、好きとちゃうんかな。


やったら、無理強い出来ひんし。


部活一緒なら、
夏休みも放課後も、
一緒におれると思ったのに。


ちょっとぼんやりしてたら、

康二の蹴ったボールが飛んで来んの、
気付かへんかった。


そのまま、大きく逸れて、
ちょうど神ちゃんが寝転がってる方に。


ぱっと振り返ったら、
神ちゃんは、もう寝てはなかってんけど。


携帯電話で誰かと話してた。


携帯は学校は禁止や。


それに、俺はそもそも持ってへん。

うちの親曰く、

そんなもんは、不良が持つもんやって。


テレビドラマとかでは、
高校生も携帯持ってんのにな。

二つ折りのカッコええやつ。


神ちゃんのもとに、
走って、ボールを取りに行く。

神ちゃんは俺に視線送ったくせに、
まだ話し込んでる。


「おー、夏休み？
来てえや。
ほんま毎日退屈で死にそうやねん」


「綺麗な海と美味い魚だけはあるで」


「あー、もお。
羨まし。
俺もりゅーせーと一緒に、
そっち帰ってまおかな。
ほんま干からびて死にそうやねんて。
する事なさ過ぎて」


神ちゃんはいつも、

ほんまに楽しそうに、

ここでの暮らしがいかにつまらんかを話す。


神ちゃんの携帯電話なんて、大嫌いや。


いつもの電話の相手を、

神ちゃんは、

りゅーせー、って呼ぶ。


りゅーせーって、変わった名前やな。


男か女かも知らん。


神ちゃんとの大切な時間を奪う携帯は、

俺にとっては敵や。


「そんじゃ、ばいばい。
来週な」


神ちゃんがやっと、電話を切ってくれた。

足元に転がってたボール、さっと拾って。


「ごめん。
全然、ボールに気付かんかったわ」


そう言いながら、俺に投げてくれた。


「神ちゃん、俺、お腹痛いからもう帰るねん。
一緒に帰ろ」


また嘘をついてしまった。


神ちゃんの影響か、
最近の俺、
どんどん悪い子になってってる。

自覚はあるけど、どうしようもないねん。


神ちゃんを独り占めしてたいから・・・

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