シルエット

２ ページ44

手が震えてくるんを、なんとか押さえる。


「真琴のやつ、何言うてんねやろ。
夢でも見たんちゃう？」


上手く笑えたかな。

この関係がバレたら、
俺ら、きっと、そばにはおられへんなる。


「やんな！
あいつ、おかしな漫画の読み過ぎちゃう？
じゃあ、俺、先、部活行くわ！」


康二が笑ってくれて、ほんまにほっとした。


駆け出してった背中が、
廊下の角を曲がった時、

体から力抜けて、崩れ落ちそうになった。


「大毅？帰ったんかな・・・」


中から、ともの寂しそうな声がして。


慌てて、保健室に駆け込む。


「とも、起きたん？」


「俺、寝てた？」


「うん。ぐっすりやったで。
めっちゃ可愛い寝顔やった」


なんなら、寝起きの今の顔も。

髪の毛、ちょっとはねてるとこ、
手櫛で直してやったら、
嬉しそうに、はにかんでるくせ。


「あほ。
恥ずいこと言うな」


ともは、基本、こんな対応。


「もう球技大会終わったって。
どうする？とも、部活行ける？
休む？
休むんなら、俺も」


「行くよ。
ぐっすり寝て疲れ取れた」


「じゃあ、自転車置き場で待ち合わせな」


「うん。
大毅、最後にいっぺんだけ」


ともが、俺のジャージの袖を揺らした。

その仕草だけで、胸がきゅっとなる。


「いっぺんだけ何？分からへん」


ねだるとこ見たくて、
わざと焦らしたら、

むうって膨れた。


こん顔も好き。


「分かってるくせに。
大毅が意地悪するならもうええ」


ぷいってされてしもて、焦る。


「嘘って。
とも、目ぇ閉じて」


とも相手やと、
すぐ折れてまうねんなあ。


「大毅、あんまし成瀬と仲良せんといてな。
次は俺が飲み物渡したげるから」


保健室出る時、ちっちゃい声で言われた。

めっちゃ早口で、最初、聞き取られへんかって。


「え？」


聞き返したら、
照れたんか、

とも、


「何でもない！
俺、先行く！」


誤魔化して、急に駆け出してった。
　
あれって、やきもちよな？


「なんなん、可愛ええねんけど」


にやける。


ちょうどそこに桐山先生が帰って来た。


「重岡て、学年一位の神童の子やったんやな」

３→←秘密の関係。１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す