シルエット

３ ページ3

そんな混じり気ない目で見るなや。


こいつとおると、無性にイライラする。


「俺は友達とかいらんから」


そう答えたら、
重岡、不意に悲しい目してさ。

俺が悪者みたいで後味悪いやん。


ちょっとそんなこと思った俺がアホやった。


「えー！俺ら、もう友達やん！」


急に立ち上がったか思たら、
背中からガバッと抱きついてきてんで。

小学生か。


初日から、めちゃくちゃ疲れた。









ガンガン照りの中、
学校出て、海沿いの道を歩く。

バス停までどんだけあるねん。


おまけにバス、１時間に１本て。

泣けてくるやろ。

はよ、チャリ買わな。


そもそも自転車屋あるん？


俺、こんなとこでマジで生活していけんのかな。


項垂れてたら、

キュキュってブレーキ音がして。

自分の足元のローファーの目の前に、
自転車の車輪が急停車した。


どこで売ってんの？いうような、
白のだっさいスニーカーに、
おかんが乗ってるようなママチャリ。


嫌な予感しかせえへん。


「神ちゃん！
なんで先帰るん！
待っといて言うたやん！」


やっぱし。重岡や。


こいつ日直やったから、
解放された思たのに。


メガネは授業中だけらしいて、
今はかけてへん。


吸い込まれそうに、綺麗な漆黒の瞳してる。

つい見惚れそうんなって、
慌てて、視線、足元に逸らした。


「神ちゃん、バス通なん？」


「まあな」


「俺がチャリで送ったるわ！
バス、１時間後やろ？」


「ええわ。待つから」


「たまにさらに１時間遅れて来るで」


「・・・」


そんなことあるう？

公共交通機関てさ。

普通、１０分に１本以上来るやろ？

電車ないだけで衝撃やったのに。


「じゃあ歩くわ」


「何言うてんの？
家、庄司さんちの空き家やろ？
俺んち、目の前やから乗ってきって！」


こいつんちの目の前。

その言葉に、目の前が真っ暗なったわ。





結局、チャリの後ろに乗っけてもらってる。

俺を乗せて重いはずやのに、
チャリは爆走中。


「ひゃっほー！」


重岡は、大声上げてはしゃいでる。


「神ちゃーん！
加速すんで！つかまっとき！」


「はあ？」


答えた時にスピードが上がった。

なんちゅう体力してんねん。

４→←２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す