シルエット

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しげには、

恋愛感情なんてもん、
無縁そうやもんな。


いつも何にでも一生懸命でさ、
無邪気で、純粋で・・・


なんで俺、こんな、
しげの恋愛事情が気になるねん。


しげが恋に疎かろうがどうでもええやん。

俺に関係ないし。


俺、何言い訳してんねやろ。


１８時を少し過ぎた頃。


「神ちゃん！」


でかい呼び声がして。

ふと見たら、
向こうの角から、
しげが、俺に手を振ってた。


ほんまは嬉しかったけど、
顔に出さへんように、
軽く手を挙げるだけにしとく。

はしゃいでるとか、思われたないもん。

色違いのはっぴなんか、
恥ずかし過ぎて、着てこられへんかった。

その代わり、
お母さんが着てきって、
浴衣を着せてくれてんけどな。


しげがなんて言うか、
何気に緊張してる。


しげが俺んとこに駆けて来る前に。


「大ちゃん！
今年も一緒に回ろ」


成瀬の方が、先にしげに駆け寄ってった。


胸がギシって嫌な音立てる。


毎年、しげ、成瀬と祭り回っててんや。


付き合うてないって言うてたけど、

ほんまは両思いなんかもしれへんよな。


しげに自覚がないだけでさ。


俺、邪魔したらあかんよな。


しげ以外に友達なんかおらんし。

もう帰ろ。


浮かれて浴衣まで着て来た自分が、恥ずかしい。


成瀬はしげの腕に掴まって甘えてる。

いつもはしてへんメイクして、
髪の毛、アップにしてさ。

雰囲気変わって、
しげもドキッとなってるかもしれへん。

男なら、満更でもないよな。


いじけた気持ちで、
二人に背を向けて、歩き出す。

祭りの喧騒から逃れて、
舗装されてない細い路地に入った時。


後ろから、ガシッと腕掴まれた。


「神ちゃん！なんで勝手に帰るん！」


しげ、いつもと違って、怒った顔してる。


「しげ、成瀬と一緒やったし」


あかん。

拗ねてるような言い方してもうた。


「俺、神ちゃんと約束したよな？」


「せやけど・・・」


他に何も言えずに、俯いてまう。

どんな言葉も、
ただのわがままにしかならん気がする。


成瀬に嫉妬してるだけやなんか。

しげに知られたくない。

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