シルエット

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ぶどう棚の下で、手を伸ばす。

おとんやじいちゃんが来る前に、こっそり。


「美味しいなあ。
俺、こんな美味しい葡萄、初めて食べた」


神ちゃんが幸せそうにしてくれるんが、
ほんまにほんまに嬉しい。


そんな神ちゃんを目を細めてみてたら。


誰か近付いて来る気配。


「大毅ぃ？
また勝手に収穫前のピオーネ、
食ってないやろな！」


うげー。

じいちゃんの雷落ちる！


「神ちゃんっ！逃げるでっ！」


神ちゃんの白い手首掴んで、走り出す。


しっかりピオーネは失敬して。


逃げて来た先は海。


砂浜まで来て、息切れで、二人して、へたり込む。



「なんやねん、もお。
泥棒しとったんか！」


神ちゃん、文句言うてるくせに笑ってる。


「バレへん思ってん！
どうしても、神ちゃんに食べさせてあげたかったし」


「はあ？
なんでやねん」


聞き返した、その笑顔。


太陽が反射して、きらきら輝いて・・・


また胸が、ぎゅっと締めつけられた。


たった今、はっきり分かったこと。


なんで、

サッカー部入って欲しいぐらい、
いつも一緒におりたいんか。

なんで、

神ちゃんの携帯に嫉妬してまうんか。


俺・・・


「ん？しげ、どうしたん？」


砂浜に寝転がった神ちゃんが、
俺の顔を見上げてる。


「ううん。
なんもないで」


誤魔化して、俺も隣に寝転がった。


神ちゃんが、好き。

俺、神ちゃんが好きなんや。


友達とか、そんなんやなくて。


１６歳最後の夏。


俺は、生まれて初めて、恋を知った。

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