シルエット

５ ページ11

「前はな。
引っ越す前に別れたけど」


いたって、普通のトーンで返ってきて、絶句。


「やっ、なっ、そっ、」


焦ってる俺に。


「重岡、なんが言いたいん？」


くくって、笑ってる。


あー、悔しいけど、この笑顔に弱いねん。


「なっ、何人付き合うたことあるん？
キッ、キッ、キッ、」


キスした事あるんか聞きたいのに、よう聞かん。


「何人か聞きいたん？
二人やで。
中学ん時の彼女と、高校の彼女」


「・・・そっ、そんなにっ？！」


「ふつーやろ」


神ちゃんの使う、

ふつーって言葉も、

俺んとっては、敵や。


どうやったら、

神ちゃんを俺だけのもんに出来るんやろ。

俺の方だけ向いといて欲しいねん。


「なあ、しげはさ、
卒業したらどうするん？」


突然、そんな事聞かれて、びっくりしたけど。

それより何より！


「今、しげって呼んでくれた！」


嬉し過ぎて、くるくる回りたい気分や。


「あー、どうでもええやん、そこ。
なあ、どうするん。
どこの大学行くん？学部は？」


「大学なんか行かへんよ。
俺、卒業したら、村役場に入るねん。
勉強一位やから入れてくれるって！」


「そんなん、もったいないやん。
しげなら、ええ大学入れんのに」


「か、神ちゃんは、大学行くん？」


「まあ、ふつーは行くやろ？
３年なったら、勉強マジでやらなまずいかもな」


「そうなんや・・・」


大学ってとこは、特別な人が行くもんやと思ってた。

神ちゃんが教えてくれる普通は、
俺の思う普通とはだいぶ違う。


「なあ、神ちゃんはさ、どうしてここに来たん？」


「それは・・・
お父さんが出向なって。
お母さんがついてくって決めたから？
俺、一人っ子やし」


ちょっと言葉濁した気がする。

聞かれたくない事なんかもしれへん。


「神ちゃん、
サッカー部の練習、
見に来てくれたし、
今からピオーネ食べに行こか」


「ええん？」


急に目がキラキラし出した。

可愛ええなあ。


女の子より可愛いなって思う。


胸がきゅって音を立てた。


俺、おかしいんかな。


今まで、誰にも、こんな気持ちになった事ないのに・・・

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