3 ページ31
「負けないよ。
誰にも負けたくない。日向くんにも、飛雄くんにも。」
「……」
その発言を聞いて、そして現状を見て、俺はやっと何かがわかった気がした。
否、多分、わかった。Aの考えていることが。
なぜあの時、あの顔をしていて、あの場からすぐにいなくなったのか。
「……負けるわけねぇだろ。俺が、お前に。」
だったら、俺がこいつに言えることは──
そう思って、口を開く。
Aは俺に真っ直ぐな視線を向けた。
「俺はお前と違って、ずっとバレーやってんだ。
1回でもプレーヤーやめようなんて考えたヤツに、負けるわけねぇだろ。」
「……っ」
「！？、オイ影山……っ」
Aの息が詰まったのがわかった。
日向が慌てて俺に声をかけるが、止まるつもりはなかった。今コイツに必要なのはこれだと、確信したからだ。
「っ、今から追いつく。」
「やれるもんならやってみろ。」
「やるよ。」
「ビビりのクセにやれんのかよ。」
「やれるよ！」
俺の挑発に、Aは声を荒らげた。
その表情は、悲しみでも、怒りでもない。間違いなく、悔しさだった。
だから、これでいいと改めて思う。
「待ちはしねぇからな。」
言って、俺は握った拳を突き出した。
「〜っ、」
Aは何かを耐えるように大きく息を吸う。
そして、
「あたりまえ、だっ！」
そう言って俺の手に自分の拳を半ば殴るように当てた。
自然と口角が上がるのを感じる。
Aを見ると、Aも小さく笑みを浮かべていた。
「ひ、日向影山！声デカいよ！
外寒いし早く中に……って、あれ、Aさん？」
そこに声をかけてきたのは山口だ。
きっと戻りが遅い俺たちを心配して探しに来たのだろう。
「……なんか、なんか2人が一瞬でケンカして一瞬で仲直りした！」
「？、日向何言ってんの？」
日向の説明に首を傾げながら、山口は「明日もあるんだから、早く部屋に戻った方がいいよ」と言う。
もっともな意見を聞き入れようとしたその時、「オイ大地さん戻ってきたぞ！」という田中さんの声が聞こえてギクリとした。
こうしてはいられないと、俺たちは別れの挨拶もそこそこに部屋に戻ったのだった。
＊＊＊＊＊
あと3つ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます！ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (
レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです！いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおり | 作者ホームページ：http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時：2022年10月10日 21時
