第61話：名前で呼んで ページ18
第61話
ホテル下に佇むAは新山女子のベンチコートを着ていて、やっぱり少し新鮮だった。
「突然電話きたからビックリしたよ」
「……悪い。電話の方が手っ取り早いかと思った。」
なんとなく、西谷さん達に促されたとは言わない方がいい気がしてもごもごと言うと、Aは「確かにそうだね」と言って笑った。
その様子に、少しだけだが違和感を感じる。いや、俺の気の所為かもしれない。それくらい少しの違和感。
いつもの笑顔とは裏腹に、動きが忙しないような……。菅原さんの言うとおり、俺から誘ったことになにか関係あるのだろうか。
「高い天井はやっぱり違う？」
「ちょっと調整に時間かかった。」
「そうだよね。
明日の対戦相手は強いとこみたいだし、今日調整できてよかったね。」
「あぁ。お前も早く経験しろ。」
「あはは、うん。そうだね。」
とはいえ、発言はAらしくポジティブで、一見プレッシャーに感じてしまってもおかしくない俺の言葉にもしっかりと頷いた。
やっぱり俺の気の所為か。そう思い、その違和感に蓋をした。
「！」
「わ、ごめん、誰だろ……」
その時、Aの携帯が鳴り、着信を知らせた。音からして多分電話だ。
「気にせず出ろ。」と伝えようとしたのだが、画面を確認したAが
「リエーフくんだ」
と呟き、思わずムッとした。
A曰く、さっきメールが来ていたらしい。
メールの内容は烏野の勝敗や試合の事で、そういえばまだ音駒には伝えていなかったかと、自分が新山女子に編入すること、烏野のマネージャーは辞めたことを返信していたと言う。
「びっくりして電話かけてきてくれたのかな。」
今はごめんね、と言いながら、Aは変わらず音楽が鳴り続ける携帯をポケットに仕舞う。
多分、俺は今めちゃくちゃ不機嫌な顔をしていると思う。
その証拠に、俺に向き直ったAが目をぱちぱちと瞬いた。
「後でかけ直すのか。」
「え、う、うん。」
多分、アイツは未だに俺とAがその、いわゆる……そういうカンケイだと言うことは知らないだろう。
否、アイツのことだから、それを知ってもお構い無しかもしれない。恋愛感情がないからこそ。
バレーは確実に俺の方がうまいが、リエーフは身長やセンス、俺が持っていない光るものを持っていた。
合宿の時しか会っていないとはいえ、こうしてメールや電話はしているようだし、心無しかAも自分を頼ってくるリエーフに心を開いているように感じる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 354人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます！ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (
レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです！いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおり | 作者ホームページ：http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時：2022年10月10日 21時
