第四噺:六文銭の若虎と武田の猿 ページ6
――
――ははうえ、ははうえ〜!――
――まぁ、Aったら、また父の真似ですか?――
――ははうえ、Aは、父のようなりっぱなぶしになりとうございます!――
だから母上
Aがお守りします
だから行かないで
逝かないで、置いて行かないでください
『母上ッ!!』
ハァ、ハァと乱れる息を整え、腹の痛みに顔をしかめる
が、もう血は止まっているようだ。縫合が、してある。
すり、とその腹の傷を撫で上げ、走る痛みと同時に疑問がわく
どこだ、ここは
明るい、部屋だ。燭台は見当たらないのに……
それに、この布団は随分と柔らかく、気持ちがいい
きょろきょろと忙しなく辺りを見回していると、二つの気配が近づいてくる
すぐさま近くにあった私の刀を持ち、構える
がちゃり、と奇妙な音を鳴らして開いた……扉の向こうには
「あ、起きてる」
「む!なんと頑丈なむす……ッ!?ふ、服はどうしたのだ!?」
「いやいや旦那。急に腹斬れてる女の子運んできて俺様に縫え!とか無理難題押し付けておいて……縫うなら服脱がすでしょ!ってか神に誓って見てないから!そりゃちょっとはこう……あててっ!冗談だっつの!!」
『……フフ、これは、夢か』
顔は、幸村と佐助殿のそれなのに
見た事のない衣服
私の名を知らぬ二人など
「あーっと、ねぇ、アンタ。保険証とか持ってなかったけど……って何模造刀構えてんの!」
「模造刀でもあぶのうござるぞ!」
『模造……フフ。ふは、ふははははは!!』
「な、なに!?」
模造刀!?この刀を見ても模造刀!?
本当に誰なのだ目の前のこの二人は!!
『……いえ、少し……絶望した、だけで。……すまない、世話に、なりもうした。』
そう言ってゆっくりと立ち上がり、ふらつきながら、刀を杖代わりに歩く
血を失いすぎたか、と思いながら、呆然とする二人の合間を縫って扉のようなものから出る
木でできた廊下、だ。長くて、懐かしい。
ゆっくりと。歩く
これから、どうしようか
……なんて、誰も教えてはくれぬか
自嘲的な笑みを浮かべ、私は道なりに、道なりに進んだ。
――
ここまで絶望
しかし希望は突然にやってくる。
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@無 - どうか更新を...........................() (2019年1月7日 21時) (レス) id: 9d95717760 (このIDを非表示/違反報告)
musiclove9213(プロフ) - 続き楽しみにしてます! 頑張ってください♪ (2018年6月22日 13時) (レス) id: f2e3fea196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚鹿@死神ちゃん★ | 作成日時:2017年7月23日 21時