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第二噺:日ノ本で木漏れ日を ページ4

――


光の先には、大勢の人間が歩いていた




……大阪の港町のようだ。




しかし、どう見ても彼らの顔だちは日ノ本のそれであった




しかし、どう見ても彼らが纏う衣服や、手に持つ箱は見たことが無かった




腹を押さえ、呆然とする私に、次第に雑踏の足が止まる




滴り落ちる赤に、人々の顔が驚きに変わるのがわかる




……ひとまず、言葉が通じるかは分からないが、会話を試みて―……



そう思い、口を開こうとした矢先だった



「え……なにあれ……マジ?」



「まさか、コスプレかなんかだろ?リアルだな〜〜」




「写真撮ってつぶやいたったーに上げようぜ!!」




雑踏は、嗤う



私を見て、こすぷれがどうだとか、りあるがどうだとかのたまって



手に持つ箱のような物を光らせて、かしゃかしゃという音と共に、また嗤う



『な、にを……ッ、して……いる……?』




何が可笑しい



腹の傷だ、逃げ傷ではない



何故笑う



その箱で何をしている



何だ、言葉は分かるのに、日ノ本言葉だというのに




何なんだ、これ




分からない、怖い、なんだこれ、なんだ、なにを、なん、なんで




『……ッ見世物じゃないッ!!散れ!!ここは何処だ!!答えよ!!』




声を荒げて、そう問う



人々の笑いは止まる



顔を見合わせて、そして



「え……なに?怖いんですけど……いかれちゃってるのかな……?」



「警察呼ぶ??」



「偉そう……意味わかんねーし」



非常な、冷たき、声



と、共に私の額にかつん、と当たっては、顔から滴る苦い香り



『うっ……!?』



「絶対やばいって!警察呼ぼ!!」



「こわぁ……」



「まじないわ」




何だ、何なんだ、コイツらはなんだ



日ノ本の言葉をしゃべるのに、日ノ本の人間ではない



『……ッ!!!』



私は腹の傷を押さえ、元いた暗き道へと踵を返す




訳が分からない




何故か分からないが、涙がこぼれて仕方がない




泣いたことなど、泣くなど、なんと情けなし




ひたすら走っていたら、雨が降り出した




『……はぁ、はぁ……』




随分、動いて、血が……




どうにも立てず、固く冷たい地面へと倒れ込む





死ぬのか、ここで




私は……



死ぬるなら、日ノ本で




木漏れ日を浴びながら、一人静かに……




「そこな御仁!大丈夫か!?」




ああ、懐かしき、声が聞こえる




私は、都合のいい夢だと、顔を上げた



――
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@無 - どうか更新を...........................() (2019年1月7日 21時) (レス) id: 9d95717760 (このIDを非表示/違反報告)
musiclove9213(プロフ) - 続き楽しみにしてます! 頑張ってください♪ (2018年6月22日 13時) (レス) id: f2e3fea196 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柚鹿@死神ちゃん★ | 作成日時:2017年7月23日 21時

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