Will get married.【梶裕貴】

控えめにして ページ25

「……やっぱり…緊張するな」


バレンタイン当日の朝。

冷蔵庫の前でラッピングしたチョコを持って立ち尽くしていた。

「なんて渡すべきだ？んー…

このチョコが溶けちゃうくらい愛してる♡」


いやいやいや、無い。

「私の愛の形さ、受け取ってくれ」

いやいやいやいや、もっと無いわ。



「おはよー」


「お、おおおはよう！！！」

見られて…無いよね？無いよね！？


「お湯沸いてる？」

「う、うん！沸いてる…」

「ありがとー」

まだ眠そうな顔でインスタントのコーヒーを入れた。


いや、もうここは何もキザなこと言わないで素直に渡す方がいいよね。


「か、梶くん…？」

「んー？」

「あのさ…これ」

「これは？」

「いや、今日バレンタインだからさ」

「あー！そっか！そうだそうだ！
わーありがと！！」



「多分、私作ったのより美味しいチョコたくさんもらうと思うんだけど…」

「何言ってんの？」

「へ？」

「俺が『Aちゃんのチョコより美味しいチョコいっぱいもらってさぁー』とか言うと思う？」

「お、思いません…けど」

「この前も言ったじゃん。俺はAちゃんが1番だってさ」



そう言いながらラッピングを開けて小さなケーキを１つ摘んで食べた。

「…うん、美味しい。」

幸せそうに笑って、美味しいって言ってくれた。

「これは…本命チョコだよね？義理チョコと同じとか…」

「な、ないない！！全然ない！」

「良かった…そうだったらちょっとショックだった」


「義理っつっても、毎年義理は悠だけだし…」

「今日学校？」

「ううん。明後日登校日あるけど、一応今日持ってく」

「そっか。」

大学入試を前に高3は休みになっていた。

もう決まった私は仕事に打ち込んでいるわけで。



「…一応、頑張って作ったから…ね？」

「なに弱気になってんの、本当にお世辞とか無しで本当に美味しいよ？」


「…ありがとね」


ちょっとビター過ぎたかなって心配だったけど、

控えめにして正解だったかな…？

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