Will get married.【梶裕貴】

好きにならなくてよかったです。 ページ23

「本当に好き？」


「…え？好きですよ？」

「他に目的とかないの？」


「？…どういうことですか」



「ほらー、あれじゃん、年上の人の方が金持ってんじゃん？

付き合って好きなもの買ってもらったりとかさー
お金もらったりとかさ？」




一瞬何を言われてるのか分かんなかった。

こんなにデリカシーのない事を
こんなにさらっと言われて。



先輩って本当はこんな人だったの…？


悲しくて腹立たしくてテーブルの上の水の入ったコップを握りしめた。




「向こうも体目当てとかー…

…っ！！？ちょ、何すんだよ！！」




先輩が話し始めた一言で怒りが頂点まで達して、そのまま水をかけた。






「そんな人じゃない。
お金なんかで付き合ってない。

先輩みたいな人と比べ物にならないくらい素敵な人ですよ」



「…な、なんだよ」




「…先輩の事、好きにならなくてよかったです。」



そのまま席を立とうとした。

「ちょ、待てよ！じ、冗談だってば！
な？座れって」


財布から千円札を出して机に置いた。


「ご飯代、払っといてください。お釣りいらないんで。

なのでこっち帰ってきて見かけてももう話しかけないでください。」



先輩が帰る私の背中を見ている気配だけ残っていた。









「…はぁ」

店を出て駅に向かっている途中の横断歩道で信号を待っていると、携帯が鳴った。

「もしもし？」

『あ、もしもし？俺だよ、俺』

「…オレオレ詐欺みたい」

『ち、違うよ！梶だよ！裕貴！！』

「分かってるよ、どしたの？」

『右見てみ』

「え？」



右の横断歩道の向こう側に、
信号は青なのに渡らない人影があった。

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