KINGの彼は《K.Kawamura》

16 ページ16

.




『は、はいっ、』


「昂秀と何してんねん。」




声の主は壱馬くんだったみたいだ。




『バイクいじってるの横で見てた、』




壱馬くんに堅苦しいから敬語やめろって言われて、
まだ辿々しいけど頑張ってタメ口で話す私。

さん付けもやめろ壱馬で良い、って言われたけど
慎くんたちでさえ"壱馬さん"呼びなのに
私ごときが"壱馬"なんて呼べるわけがない。

間をとって"くん"付けで呼ぶことになったけど
恐れ多くてまだ壱馬くん、って直接呼んだことはない。




「……手、繋いどらんかった？」


『へ？、手？繋いでないよ？』


「さっき昂秀に手伸ばしとったやん。」


『…？、工具渡してた。取ってって言われたから』


「…そ。」




いや、聞いてきたの壱馬さんなのに。
その興味のなさそうな返事はなに。

昂秀をチラッと見ると何やら含み笑いをしていて感じが悪い。




昂秀「壱馬さん、A 学校行きたいらしいっすよ。」


「そうなん？」


『留年したくないんだもん…、』


昂秀「だから俺らの学校に転校してきなって。ほぼランペのメンバーだし、その方が色々と安全だし。ですよね、壱馬さん。」


「そやなぁ、外部に通われるよりは俺らの高校おった方がえぇかも。」




どうしたい？って聞かれて少し悩む。




『でも転校するってなったらお母さんと…、』


「あー…、お前がここおること母親は知ってんで。父親とのことも話した。……続き聞くか？ 聞きたいなら話すけど。」




そう壱馬くんが言うってことは
お母さんは私じゃなくて義父を選んだんだろう。

私もそこまでバカじゃない。

あいつと出会ってお母さんは本当に変わった。
あいつが変えたのか元々の本質がそうだったのか
もう今はどうでも良い。

あいつと再婚した時点でお母さんに関しては
諦めがついてたんだと思う。

我ながら冷たい娘だ、血は争えない。



.

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す