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傍観者 ページ42

乱数said

俺は目の前でピロートークにしては重すぎる内容を話す女を見て決意が鈍る事に気がついた



彼女の正体を知っている俺は
共犯と言われても可笑しくない

否、だったら全てを動かしている中王区は共犯者だらけだ

彼女一人が背負うには重すぎる


俺はAに気付かれないように舌打ちをする






哀れなあの子の為に彼女を殺すつもりだった

今も機械に繋がれ涙を流すか弱い少女の為に


なのに、聡明な彼女は


飴村乱数の見え透いたナンパに引っ掛かってしまうほど弱っていた



今にも死んでしまいそうだった







本当は声をかけるつもりはなかった


彼女の死を望んでいた俺が引き留める道理はなかった

あのままにしたらきっと彼女は一人死んでいた

なのに俺は彼女に声をかけていた









「(ごめん、ごめんね。君を助けられない。)」



「(だって、沢山裏切られても人を信じてしまう程純粋な彼女を、愚かしい程の優しさを持つ彼女を誰が責められる?)」




「(いっそ中王区の女達のように傲慢な人なら罪悪感は無かったはずだ。自業自得だと罵り、謗り、軽蔑出来た。でも)」






「(痛みを感じる暇も与えず、次へ次へと彼女に感情を与える。学ばせる。…反吐が出る。)」




彼女は


珠久里Aは自分の預かり知らぬ所で大きな思惑が蠢いている事に気付いているのだろうか







俺は幼いあの子を守りたかった

その為に彼女を殺さなければならなかった



でも出来ない





無防備にうなじを晒す彼女に刃を突き立てる事が出来ない








彼女が背負う物、

俺達が与えてしまった業が重すぎるんだ

瘡蓋にすらなっていない傷を掻き毟る行いを強要して傷つけているのは俺達だ





結果、俺は彼女の幸せを願ってしまった

俺にそんな資格はない
勿論他の人にもだ



ジリジリと短くなる煙草を眺めながら
思うだけで行動する事が出来ない自分に嫌悪する






俺は中王区には逆らえないから


いや、違う




ギリッと歯噛みする

全てを知って、傍観しているだけの俺が一番罪深い




煙草の灰が灰皿にボトと落ちた

山田一郎編 依存しないでマイノリティEp1 said Heroine→←入間銃兎編 ダストボックスの住人Last Episode said Jyuto



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おこめ(プロフ) - 犬田さん» コメントありがとうございます!ほわぁっ!?こんな駄作を面白いと評価していただいてありがとうございます!ご期待に添えるよう頑張ります! (2019年12月11日 7時) (レス) id: 59f0fac7fa (このIDを非表示/違反報告)
犬田(プロフ) - タイトル見てすっ飛んできました。新鮮なお話でめっちゃ面白いです~!これからの展開が物凄く気になります。更新応援してます! (2019年12月10日 23時) (レス) id: 4889f7f66e (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 猫腹さん» コメントありがとうございます!凄く励みになります!頑張りまぁっす!! (2019年12月7日 20時) (レス) id: 59f0fac7fa (このIDを非表示/違反報告)
猫腹(プロフ) - 初コメ失礼します。凄く好きです、頑張ってください (2019年12月7日 19時) (レス) id: 437f4e7ef6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おこめ | 作成日時:2019年12月5日 23時

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