吸血鬼になった彼との (ページ10)

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しょくじページ10

着替え終われば、フェリドは食堂に来いと言っていた。

大昔の記憶を頼りに歩いてみるが、正直案内はつけて行ってほしかった。ちょっと迷いそう。

「あ、ここか」

「着替え終わった～？Aちゃんはどんな服を選んだのかなー…あれ」

「ん？」

食堂に入れば、部屋の中に食べ物のいい匂いが充満していた。食卓の上には、食べきれないほど豪華な食事がたくさん。

フェリドは先に椅子に座って私を待っていたようだが、私の姿を見るときょとんと目を丸くしてしまった。

「そんな服用意してたっけ？」

「奥の方に隠れてたよ」

「失敗したな。自分でちゃんと確認しとくんだった」

どうやら、あの変な服しか入っていないクローゼットは屋敷で働く吸血鬼に用意してもらったものらしかった。

フェリドにしては、その中にまともな服を用意するなんて珍しいと思っていたけど、失敗してくれていたらしい。助かった。

「ね、フェリド」

「なに？あ、その服も似合ってて可愛いよ」

「どうも。あのね、今更だけど、私がこんな服着ていいの？私、この都市内じゃ家畜ってことになってるんだし、あの服脱いだらまずいんじゃない？」

おざなりな褒め言葉を適当にスルーしつつ、気になっていたことを聞いてみる。

私だって、フェリドと昔知り合っただけの、ちょっと長生きなただの人間だ。こんな特別扱いのようにしていいのだろうか。

「まずいね」

「まずいんじゃん」

「でも、バレなきゃ大丈夫～。吸血鬼は人間に興味ないから、それほど難しくないよ」

そういう問題らしい。
フェリドがそう言うなら、私はそれに従っておこう。吸血鬼の貴族に命令されましたと言えば、責任は全部フェリドのものだ。

「そんなことより、お腹空いてるでしょ。好きなだけお食べ」

「ん。…変な薬とか入ってない？」

「入れてほしかった？」

「いや…まあ、いいや」

お腹が空いているのは本当。
お言葉に甘えて、食事をさせていただく。しかし、吸血鬼は食事をしないのに、どこからこんな料理が出てくるのだろうか。謎である。

フェリドは席についているとはいえ食事はしないので、一人で勝手に食べ始める。

美味しい。手がどんどん進む。

それでも、女の胃袋に入る量なんてたかが知れていて、お腹がいっぱいになったのは食卓の五分の一が減った頃だった。