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ちから ページ49

「大事な話?」



目覚めたばかりの私に、フェリドが頷く。




「そう。大事な話」




そう言って、フェリドが優しく私の頬を撫でる。
私の顔を見る目が優しい。とても、優やミカの家族を殺した吸血鬼と同じ存在とは思えない。




「…なにしてるの?」



「いや〜?いざ手放すとなると寂しくなるなあって」




私の問いに、フェリドが答える。





「君の存在がクルルにばれた。もうここには置いておけない」



「クルルって…ああ」





吸血鬼の女王と呼ばれていた少女だ。フェリドよりもずっと強い、かなり上位の吸血鬼。





「ばれたら、まずい?」



「そりゃもう。すっごくまずい。なんせ彼女は『終わりのセラフ』に関与しているからねぇ。蘇生する人間なんて、ばれたら何されるか。僕でも予想がつかない」





また『天使(セラフ)』だ。私の知らない話。

とにかく、フェリドにとっては今私をこの都市から出すのが都合がいいらしい。さんざん世話になったし、それに異議を唱えるつもりはないけれど。





「じゃあ、私はこれからどこに行けばいいの?」




「それはね…君に任せる」




「…え?」




「君は昔よりずっと強くなったけれど、まだ弱い。もっともっと力をつけて、で、僕を手伝って」





自分の胸に手を当てて、フェリドが言う。
それは、フェリドの計画の片棒をかつげというお願いだ。

とにかく力をつけてと。目標としては、貴族の吸血鬼とも戦えるくらい。





「そんな無茶な」



「僕のためが嫌なら、クローリー君のためでもいいよ。彼も存分に巻き込むからねぇ。君だって、自分の力不足に悔しい思いをしたばかりだろ?」






図星だった。昨日、フェリドになす術なくやられて、悔しさに拳を握りしめたのは記憶に新しい。

…まさか、私をこう思わせるのも計画のうちだなんて言わないよね。







フェリドのためだなんて胡散臭い。どうせろくなことにはならない。



でも、この世界がすでに見えないレールの上を走り始めているというのなら。

それを、見届けるのが私の役目だというのなら。



力は必要だ。この世界で、自分の大事なものを守れるように。





「わかった。クローリー様を守れるように、強くなる」



「クローリー君は君よりずうっと強いけどね。やる気が出たならなにより。がんばって」





フェリドが美しい顔でにっこりと笑う。


そしてまた、ここで物語に区切りがついた。

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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時

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