はらぺこ ページ28
「お久しぶりです、クローリー様!名古屋からお疲れ様でした!」
使用人に案内されるまま食堂まで行けば、広い広間の食卓に一人座って暇そうにしているクローリーがいた。
クローリーと最後に会ったのは、たしか一ヶ月くらい前だったと思う。今回は少し長かった。
私はクローリーの姿を見るなり、駆け足で彼の横に向かう。フェリドとは先ほど別れたので、今は私一人だ。
「あれ、フェリド君は?」
「クローリー君に用事はないし、僕は先に部屋に戻るよ。適当に相手しといて〜って言って、行っちゃいました」
「今のフェリド君のまね?…そうか、しかし困ったな。血を貰いたかったんだけど」
私のフェリドの物真似に少し笑ってから、クローリーがふむ、と顎を撫でる。
クローリーがこんな風に言うのは珍しかった。
なにかあるたびに血を強請ってくるフェリドと違って、クローリーは私の前ではあまり血に対する欲求を見せたりはしない。
それだけ、お腹が減っているということだろうか。
「クローリー様、名古屋では飲んでこなかったんですか?」
「最近ちょっと忙しくて、飲む機会がなかったんだ。フェリド君に譲ってもらおうと思ってたんだけど…今から部屋に行って、素直にくれるかな」
「ん〜…私、クローリー様になら血を吸われても構わないんですけど…」
「だめだよ。言ったろ?僕は君の血は飲まない」
ダメ元で提案してみたが、やはり駄目みたいだ。
クローリーは、私の血を飲もうとすると、ひどい背徳感というか、本能的にいけないことをしているような気分になるらしい。
それは生前の執着がうんたらとフェリドが言っていたけれど、よく分からなかった。
けっして私の血が口に合わないということではないらしいが、こういう時に力になれないのは、少し複雑な気分だ。
「仕方ないか。フェリド君に血が貰えないか聞きに行くけど、来る?」
「行きたいところなんですけど、私もお腹が減ってきたので、食事を用意してもらえるよう頼んできます。今回はどれくらい居てくれますか?」
「ん〜、数日はいるつもりだよ」
「わ、じゃあ、また後で会いに行きますね!」
いつもクローリーは、長くて一週間くらい滞在してくれるので、今回もそれくらいいてくれたら嬉しい。
私は笑顔で手を振って、クローリーと別れた。
98人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時