またね ページ24
「じゃあ、フェリド君」
「ん?」
「用事はこれだけ?」
「まあそうだね〜」
話にひと段落がついたところで、飽きたのか退屈そうに聖書をめくっているフェリドにクローリーが確認する。
「なら、僕は名古屋に帰るよ」
「あっ、じゃあ私も…」
クローリーが帰ってしまう。
今は名古屋に住んでいるのかという情報を頭に刻みながら、その後をついて行こうとすれば、クローリーに額を小突かれた。
「君はだめだよ」
「えっ!?なんでですか」
「そりゃあ、危ないからね」
理由を聞いても分からない。
頭にはてなを飛ばす私を見て、クローリーが言葉を続けた。
「今、外がどうなっているのかは知ってる?」
「大人が死んで、吸血鬼が地下から出てきて…」
「そう。で、ヨハネの四騎士っていう、人間だけを狙って襲う化け物が闊歩してる。地上は今、人間が住めるような場所じゃないんだ」
人間だけを狙って襲う化け物。
それには心当たりがあった。世界が滅亡したその日に、私はそれに襲われて、殺されている。
「クローリー様と一緒にいてもダメですか?」
「僕だって忙しいから。ずっとは無理だよ」
たしかに、吸血鬼には吸血鬼でやる事があるのだろう。
私はクローリーとは人間だった頃からの知り合いだし、フェリドも吸血鬼にしては変わり者なので普通に話せているが、それ以外の吸血鬼は恐ろしいし、脅威だ。
そんな吸血鬼だらけ、化け物だらけの外で安全に暮らせるかと言われると…
「無理、ですね」
「うん。だから君は変わらずフェリド君の屋敷に住んだ方がいい。たまには会いに来るから」
「…あの、それは私のことを心配して、そう言ってくれてるんですか?」
「そうだね」
それなら、素直に従うしかない。
吸血鬼になってしまっても、クローリーが私のことを少しでも気にかけてくれていると言うのなら、それはとても嬉しいことだし、その思いに報いなければと思う。
なら、とっても寂しいけれど、言うことを聞こう。
「分かりました。きっと会いに来てくださいね」
「わかった。じゃあ、僕は行くよ。またね」
「あ、帰るの〜?帰り道気をつけてね」
ひらひらと手を振るフェリドに苦笑して、あっけなくクローリーは行ってしまった。
見送りに行こうかとも思ったが、それをすると離れがたくなりそうだったので、やめる。
…次はいつ会えるだろう。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時