かくにん ページ23
クローリーに抱きしめられた。
油断していたところを、いきなりだった。
抱かれるのは初めてではないけれど、久しぶりだったし、顔がクローリーのよく鍛えられた胸に直接触れるおかげで、破壊力は抜群だ。
顔が限界以上まで熱を帯びて、混乱しすぎて涙が滲んできたところで離してもらったが、足取りが少し怪しい。
「はぁ…うう」
「うっわ、真っ赤〜。僕がなにしても動じなかったのに。妬けちゃうね」
「ん〜?フェリド君、なんかしたの?」
「うん。キスした」
「わーわーわー!??」
さらっとそんなことを言ったフェリドの口を慌てて塞ぎに行くが、もう遅い。
余計なことを言う口を塞ごうとした手は、にやにや楽しそうに笑うフェリドに掴まれてしまうし、クローリーの顔を見るのが怖い。
おそるおそる振り返ってみれば、クローリーは少し驚いた様子ではあったものの、そこまで動じてはいないようだった。
「あの、違います、クローリー様」
「ふむ」
「決して浮気とかじゃないんです。襲われただけで」
「そんなに抵抗してなかったけどね〜…うわわ、こわーい」
もうこれ以上余計なことは言うなと端正な顔を睨めば、フェリドはわざとらしく肩をすくめた。
その様子を見て、クローリーが言う。
「まあ別に、僕は構わないけど。A、わかってる?」
「はい?」
「もう僕、君のこと好きじゃないからね。吸血鬼になっちゃったから」
「あ、わかってますよ」
それについては、五百年くらい前から覚悟はしていたので大丈夫だ。
逆にいえば三百年くらいはその事実に枕を濡らしたことも少なくはなかったわけだが、それは言わないでおく。
「ただ、私が好きなだけです。それはだめですか?」
「いや…。君がそれでいいならいいけど」
「なら問題なしです。ふふん、私だって長く生きましたからね。心の準備はちゃんと済ませてたんですよ」
どうだと胸を張れば、「その割には抱きしめられただけで大慌てだったけどね」と突っ込まれてしまった。
それに関しては、私の想像外にクローリーが露出の多い格好をしていたのが悪いと思う。私のせいではない。
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リリア - 最高です!!!!! (2021年8月14日 12時) (レス) id: c153dc8275 (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - ベルモットさん» 色気…!!ありがとうございます!嬉しいです…! (2020年4月19日 13時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - ストリート展開や文章に色気があってリアリティーが感じられました。 (2020年3月28日 17時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 黒胡椒さん» ありがとうございます!がんばります〜! (2020年2月19日 0時) (レス) id: 419fa80be8 (このIDを非表示/違反報告)
黒胡椒(プロフ) - 好きです!更新頑張ってください! (2020年2月18日 16時) (レス) id: e2f590a1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さとう | 作成日時:2020年2月9日 21時